烏口腕筋はどういう筋肉?
烏口腕筋は肩甲骨の烏口突起に付着する3つの筋肉の1つです。烏口腕筋の他の筋肉は上腕二頭筋と小胸筋が烏口突起に付着している筋肉となります。
烏口突起は上腕と肩甲骨、胸部(胸郭)の3方向の複雑な相互作用を行っています。烏口腕筋は腕の筋肉の中ではあまり筋力が強い筋肉ではありません。機能としては肩関節の屈曲と内転を補助する作用で、水平屈曲をする際には大きな役割をを果たします。例えばベンチ・プレスのように肩関節を水平屈曲させるエクササイズは烏口腕筋の筋力トレーニングには最適です。
また、ラット・プル・ダウンでも烏口腕筋を鍛えることができます。烏口腕筋のストレッチは肩関節の大きな伸展によっても伸ばされますが、大きな水平伸展によって最もストレッチされます。
烏口腕筋の機能的解剖
烏口腕筋は上腕二頭筋と共に、関節の屈曲と内転に強く機能ます。これはまるで第三の上腕二頭筋のような役割をしています。この烏口腕筋は、内転時に三角筋の拮抗筋となり、三角筋は外側に位置しているのと、烏口腕筋は内側に位置していますが、上腕骨の中間あたりに付着部を持つ点はよく似ています。
烏口腕筋、広背筋、大円筋、大胸筋、上腕三頭筋の長頭は、ともに肩関節の内転に作用しています。下に引いたり、体の方へ寄せるような動作、腕で体重を支えるような動作、スポーツ動作では体操のつり輪の競技や平行棒の競技などが、肩関節の内転させる機能を含んでいます。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
烏口腕筋はゴルフでのスイングやソフトボールで速球を投げるなどの腕が体を横切る時に使われています。烏口腕筋は肩関節をしっかりと安定させ、手を歩行動作時に前への腕の振りを補助している機能もあります。
◆肩関節の屈曲:上腕骨が体幹から前へ、まっすぐ離れる動き。
◆肩関節内転:上腕骨が体幹へ向かって、内側方向へ近づく動き。
◆肩関節の水平屈曲:90度外転にある上腕が水平面上で胸の方へ向かう動き。
名前の由来
烏口腕筋は、肩甲骨の烏口突起(カラスのくちばし状の突起)と上腕に付着していることからこの名前が付いています。
烏口腕筋の大きな特徴
烏口腕筋は比較的小さな筋肉なので大きな力を発揮することはできません。この烏口腕筋は肩関節約90度とまでの屈曲には関与できますが、それ以上の屈曲では筋肉が引き伸ばされすぎるために力を発揮できなくなります。
マッサージのための機能解剖学
烏口腕筋の作用
烏口腕筋は、起始が肩関節よりも近位にあることと、肩関節の前面を通過することによって、肩関節を屈曲させる機能を持ちます。
また、起始の位置が肩関節よりも内側にあることから、肩関節を内転させることもできます。
・上腕骨の内転させる
・上腕骨を屈曲させる
・肩甲骨の下方脱臼(下の方に抜けないよう)に抵抗する
触診方法とほぐし方
この烏口腕筋の触診方法では上腕二頭筋の短頭と区別することがとても難しく触診が困難です。しかし、肘関節屈筋である上腕二頭筋に、アイソメトリック収縮で力を入れさせると、硬くなった上腕二頭筋と区別して、弛緩している烏口腕筋を上腕二頭筋の内側に、手を触れることができるでしょう。
烏口腕筋をマッサージする方法の一つとして、まずは患者さんを仰向けにして、烏口突起と上腕内側の間をたどり、その上腕内側部をやさしく軽擦法や揉捏法にてマッサージしてほぐします。
ただし、この部分は正中神経、上腕動脈、内側前腕皮神経、そして尺骨皮静脈が通ってるので注意が必要です。また烏口突起周辺を輪状強擦する方法もあります。
烏口腕筋の触診方法
先ほども解説したように烏口腕筋の触診はとても難しいですが、なんとか烏口腕筋を触診できるように頑張ってみましょう。上腕骨の内側縁中部から肩甲骨の烏口突起までは触診するのは可能です。筋束の構造は水平状で、筋線維の走行は斜めです。
肢位:患者さんには仰臥位になってもらいます。 腕は患者さんの体側に置きます。
1: 腋窩の前壁を確認します。
2: 後方外側方向へ上腕骨の内側表面を触診します。
3:上腕二頭筋の深層にある筋腹を確認し、三角筋縁位と同じくらいの距離にある上腕骨内側の停止部を確認します。
4:患者さんの肩関節内転に対して負荷をかけながら、適切な位置を確認してください。
マッサージやほぐし方
◆烏口腕筋のストリッピングと圧迫方法
・患者さんは背臥位をとってもらいます。施術者は患者さんの横に立ち、患者さんの頭の方を向きます。施術者は患者さんの治療する側の腕を肘の位置で、一方の手で支えます。
1:拇指を上腕骨内側に反って楽に伸ばせる程度に、もう一方の手(すなわち患者さんに近い方の手)で内側から上腕を握ります。
2:拇指を上腕二頭筋の下、上腕骨内側で、上腕骨の中央付近を押して、烏口腕筋の停止部を探し、押さえてリリースさせます。
3:拇指を筋肉に沿って求心性に滑らせとでん触れると痛い箇所が見つかったら、抑えてリリースさせます。
4:最後に拇指は筋肉深部、腋窩の烏口突起の起始部に達します。
※腋窩を治療する時は、烏口突起の下を腕に向かって走る、神経や血管を回避しながら、筋肉束に触れるように注意しながらほぐしていきましょう。
烏口腕筋の位置
烏口腕筋は、上腕の内側にあり、肘関節の屈筋である上腕二頭筋の短頭と接近します。
起始部
肩甲骨の烏口突起
停止部
上腕骨の内側の中央の3分の1の位置
烏口腕筋のその他の詳細
硬くなる、弱くなるで起こる症状は?
硬くなると(短縮)
肩が前に出ているような状態、いわゆる前肩になってしまいます。それは猫背になってしまう傾向にあり、慢性的な肩こりや首の痛み、頭痛にもつながります。また、肩関節の伸展や内転の動きが狭くなります。
弱くなると(伸長)
烏口腕筋はもともと弱い筋肉ですので動きの制限や痛みにはつながりにくいです。
共働筋
◆肩関節の内転
・大胸筋
・広背筋
・大円筋
◆肩関節の伸展
・大胸筋
・三角筋前部
・上腕二頭筋
拮抗筋
◆肩関節の外転
・棘上筋
・三角筋中部
◆肩関節の伸展
・広背筋
・大円筋
・棘下筋
・小円筋
・三角筋後部
・上腕三頭筋
・大胸筋(肩関節屈曲位からの伸展)
烏口腕筋の関連痛領域
上腕、前腕、および手の後面と、三角筋中部及び前部の領域が関連領域です。
その他の検査対象筋
神経支配と血管供給
支配神経:
筋皮神経 C5・6・7
血管:
上腕動脈
烏口突起とは? どこにある?
烏口突起は鎖骨に対して前方およびに家宝に突き出していて、肩や腕にある複数の筋肉の強力な付着部となっています。 ただし、多くの筋肉の起始部として存在していることにより、多くの痛みの症状が現れることがあります。
似たような箇所の症状や痛みで、上腕二頭筋の長頭腱炎と勘違いすることが多いので、適切な問診や触診で症状に対して間違えず対応していきましょう。
烏口突起の靭帯
烏口肩峰靭帯
烏口肩峰靭帯は肩甲骨の烏口突起と肩峰を結ぶ役割をしています。頭上での運動時に上腕骨の安定性を高めています。烏口肩峰靭帯によって形成されるV字構造は上から観察することができます。
この構造は棘上筋や三角筋によって肩甲上腕関節を外転させた時、関節窩にある上腕骨が転位するのを制限している役割も果たしています。
烏口鎖骨靭帯
烏口鎖骨靭帯は鎖骨と肩甲骨の烏口突起をつないでいます。健康体の人体は様々な角度で複数の方向の動きを制限しています。 垂直方向の烏口鎖骨靭帯は鎖骨が上方に引き上げれるのを制限しています。
烏口上腕靭帯
烏口上腕靭帯は肩甲骨の関節窩に、上腕骨の近位を保つ作用に役立っています。また、烏口上腕靭帯は上腕骨と肩甲骨の烏口突起につなぎとめていて、腕を体側に休めている時に、張力と安定性を与えてる役割があります。烏口上腕靭帯を繊維と肩甲上腕関節方は斜め上から観察できます。