前回は「内臓脂肪が慢性炎症や血管を傷つけ大きな病気の原因」を紹介しました。今回は内臓脂肪が増えすぎると糖尿病になる原因や太っていなくても糖尿病になる可能性なども紹介します。
内臓脂肪が増えると血糖値が下がらない
食べ過ぎてエネルギーを過剰に摂りすぎると内臓脂肪が増えます。
内臓脂肪がたまり過ぎると上昇した血糖値が下がらなくなります。

アディポサイトカインって何?
アディポサイトカインって知ってます?体に内臓脂肪がたまりすぎると、その内臓脂肪からアディポサイトカインというホルモンが放出されます。
インスリンの働きを助ける善玉アディポサイトカインが減少し、インスリンの働きを妨害する悪玉アディポサイトカインが異常分泌されます。
結果、異常に分泌された悪玉アディポサイトカインにより血糖値が下がりづらい環境になってしまいます。
●悪玉サイトカイン(TNF-α、IL-6など)
・インスリンの働きを妨げる
●善玉サイトカイン(アディポネクチンなど)
・インスリンの働きを助ける(※内臓脂肪が増えると分泌量が減る)
インスリン抵抗性で糖が余る
内臓脂肪が増える事で脂肪細胞が運ばれたブドウ糖を拒否する働きをして血液中に糖が余ったままになります。
内臓脂肪が増えれば増えるほどインスリン抵抗性が進行してしまい、インスリンを増やしても血糖値が下がらなくなってしまいます。

糖尿病が日本人に多い3つの原因
日本人にとても多い糖尿病は遺伝的な体質、昔に比べて生活習慣が大きく変化したことによるもの、そして運動不足によるものです。
①遺伝子的な体質(インスリン分泌が弱い)
インスリンの分泌機能は欧米人に比べて日本人(東アジア人)の方が低い遺伝子的な体質を持っています。そのことにより内臓脂肪が溜まりやすくインスリン分泌がさらに低下し、糖尿病になってしまいます。
また、日本人は2型糖尿病になりやすい遺伝子多型(体質)を持っている人が多いことが、研究でもわかっています。

②日本食が少ない食生活の欧米化
日本人は昔は体に優しい日本食を食べていました。カロリーの低い魚をはじめ野菜類をメインに食べていました。
昨今はファーストフード、肉やチーズ、パンやパスタ、デザートやスィーツなど高カロリー、高脂肪、高糖質の食べ物を多く摂取するようになったからです。

③運動不足で筋力低下によるもの
世の中便利になり、移動は車や電車、エスカレーターやエレベーターなどを使うことによって筋肉を使わなくなりました。
また、デスクワークで座りっぱなしのお仕事の人も非常に多くなりました。そのことで筋力低下が起こり糖を燃やす力が低下してしまいます。筋肉量が少ない女性は糖尿病になるリスクが高まります。
太っていない人の隠れ高血糖、糖尿病に注意
実は太っていなくても糖尿病になる可能性があります。日本人の糖尿病患者の平均BMI値は23程度といわれていて、肥満のBMI値25よりも低いのです。
その基準値以下であっても糖尿病になるのです。太っていない糖尿病患者さんの腹部をCTスキャンで計測すると、内臓脂肪が過多の人がほとんどだったそうです。
先ほど説明した日本人(東アジア人)の方が低い遺伝子的な体質を持っているので、肥満体型でない人の隠れ高血糖や糖尿病に注意しましょう。

糖尿病は生命にかかわる合併症に
糖尿病は発症した初めの方でしたら正しい食事療法で治る病気です。しかし気付くのが遅かったり生活習慣を改善しないと、命にかかわる重篤な病気になる合併症を引き起こします。
①糖尿病性網膜症
目の網膜に起きる症状で、網膜に広がっている毛細血管が障害される(糖尿病性細小血管症)。進行すると視力の低下、最悪失明にいたることもあります。
②糖尿病性腎症
糖尿病が原因で腎臓の機能が低下した症状を糖尿病性腎症といいます。腎臓の毛細血管が障害され進行すると透析が必要になり腎不全になる可能性も。
③糖尿病神経障害
糖尿病の三大合併症の一つです。手や足のシビレや痛み、感覚の麻痺などの症状…。自律神経のバランスが崩れて発汗異常、排尿障害、便秘・下痢などの症状も現れます。




