今回は橈側手根屈筋の筋トレ『4種類』ストレッチ『6種類』を紹介します。
その前に、橈側手根屈筋の役割や作用は、尺側手根屈筋や長掌筋と並んで手首の最も強力な屈筋といわれてます。
これらの前腕の屈筋群の中の橈側手根屈筋は負荷抵抗に対して、手首を巻き込んだり固定する時によく働きますが、特に前腕が回外している状態で、その動きは最大になります。
では、橈側手根屈筋を鍛える筋トレ、ストレッチや痛みをとるマッサージ方法、ほぐし方を紹介します。
撓側手根屈筋の筋トレやストレッチ
撓側手根屈筋(前腕の屈筋群)の鍛え方やストレッチをご紹介する前に、この撓側手根屈筋がどこから始まりどこに停止しているかや、どのような作用や機能をしている筋肉か知っておく必要があるでしょう。
その上で筋トレやストレッチをした方がより効率的で効果があらわれやすくなると思います。
撓側手根屈筋(前腕の屈筋群)を鍛えるための筋トレ方法やストレッチ方法の前に下記をご参照ください。
撓側手根屈筋はどんな筋肉?役割と機能的解剖
撓側手根屈筋は浅層にある3つの手関節屈筋群では最も外側にあり、腕橈骨筋のすぐ内側に位置しています。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
この橈側手根屈筋は手関節の2つの目的の機能や役割を果たしています。1つ目は内側上顆(ないそくじょうか)に起始がある他の屈筋群と共に、手関節の屈曲を行う作用があります。
平で小さなトレーのような物を運ぶ際に、手掌が上を向いた前腕回外位とする時、この機能、作用は特に強く働きます。
回外位での強い手関節の屈曲は、ボーリングでの投球やアンダーハンドでソフトボールの投球を行う際にも不可欠な筋肉です。
橈側手根屈筋の2つ目の機能は、手関節の撓屈(外転)です。この動きには長橈側手根伸筋と、短橈側手根伸筋と同じように、親指の動きに関わるいくつかの筋肉も関与し作用しています。しゃべるですくう、円盤投げの最終動作でも橈側手根屈筋は強く機能作用しています。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
前腕(前腕屈筋群)撓側手根屈筋を鍛える筋トレ方法『4選』
●ここではあらゆる動作を担う手関節を安定させるための筋トレ方法を解説していきます。
手のひらを上にすると尺側手根屈筋と橈側手根屈筋、下にすると尺側手根伸筋と橈側手根伸筋に働きます。手関節は、手首でスナップを利かします。
道具をコントロールするだけでなく、とても多くのスポーツで使われている筋肉です。そのためどの競技やスポーツにもお勧めです。
また、デスクワークでパソコン作業の際やスマホのLINEやメールの打ち込みでも日々負担をかけてストレスになる前腕の屈筋群です。
ストレッチをすることにより症状を改善できますが、鍛えることにより症状を予防する作用がありますので、この筋肉を鍛えることをお勧めします。
●前腕(腕の前面)の屈筋群を鍛える筋トレ方法
手首を曲げる前腕の屈筋群を鍛えるダンベルリストカール
指先から手首(手関節)を巻き上げる動きで、前腕の屈筋群を鍛える筋トレ方法です。手首だけでなく指先も動かすことで、前腕から指先まで長く伸びている多関節の可動範囲を大きくもできることができます。
①: ダンベルリストカール【その1】
1・両手にダンベルを持ち台や机に前腕部を置きます
両手にダンベルを持ち、台や机に腕部を置きます。手のひらを上に向け、手首から先を台から出します。ダンベルは指先に引っかかるようにして持ちます。
2・肘を丸めながら手首を曲げてダンベルを上げます
1の状態から、指を指先から丸めながら手首を曲げ、ダンベルを巻き上げるように持ち上げます。肘が動かないように固定して、手首から先だけを動かします。
3・手首を伸ばしながら指も伸ばしダンベルを下ろしていきます
2の状態から、手首を伸ばしながら、手のひらを開くように指を伸ばし、ダンベルを下ろしていきます。1の体勢と同じように、ダンベルを指先にかけて持つ状態へと戻ります。
NG POINT:手首だけを動かすのはNGです。 手首だけの動きでは、指の関節をまたぐ前腕の屈筋群は伸ばせません。指や手のひらも一緒に伸ばすことで、前腕の屈筋群を全体に鍛えるのと伸ばすことができます。
②:ダンベルリストカール【その2】
片手で行うことにより手首と指の動きに集中させます。 空いている手で前腕部も固定できるため、片手で行う場合より、手首と指の動きに集中できます。
手首の可動範囲が少し広くなる効果もありますので、前腕屈筋群(撓側手根屈筋)を鍛える筋トレとストレッチを同時にできる方法です。
1・台や机に前腕部を置きます。 前腕をもう片方の手で押さえて固定しましょう。
2・指を丸めながら手首を曲げます。 手首を曲げ、ダンベルを持ち上げましょう。
③:前腕部を太ももに乗せる筋トレ
椅子に座り、前腕部を太ももにのせて行う方法ですまる手首と指を一緒に動かす基本は同じです。
④:ペットボトルでできるリストカール(③より効果が高い)
1・ 両手にペットボトルを持ち、椅子に座って太ももに腕を乗せます。(注:腕は太ももから離さず固定しましょう)
POINT1:親指以外の指で引っ掛けて持ちます。
POINT2:ペットボトルの大きさを変えれば、より負荷がかかり橈側手根屈筋(前腕屈筋群)を鍛えることができるでしょう。逆にペットボトルの大きさで行うのが難しければ、にぎりやすいもので筋トレもいいでしょう。
2・首の力を使ってペットボトルを引き寄せます。
前腕の前面(手の甲側)効かせる意識で行うとより効果が上がるでしょう。
3・手のひらを下に向けて同様に行いましょう。
前腕前面(手のひら側)に効かせるように意識して筋トレしましょう。
POINT:手首をしっかり内側へ巻き込むのを意識して筋トレをします。
橈側手根屈筋(前腕屈筋群)のストレッチ『6選』
・前腕の屈曲群をストレッチさせる方法は、肘関節を伸展させて手関節を屈曲させます。ここでは、いくつかの前腕屈筋群をストレッチさせる方法を紹介していきます。
ターゲットとなる部位を絞って重点的に伸ばしてストレッチしましょう。多くの筋肉が集まる前腕の屈筋群の中でも、辛い、重い、痛い、突っ張る筋肉をしぼり、重点的に伸ばすストレッチ種目を紹介していきます。
特に硬いと意識してる部位があれば角度や方向を変えて、そこを集中して伸ばしてみましょう。
①:ストレッチ方法【その1】
1・椅子に浅く座り、左手の手のひらを下に向けて、お尻の横よりやや奥に置きます。指先が体の方向に向くように腕を小指側に祈ります。
そして、後ろに体を傾けて、上腕二頭筋に体重を少しかけ、伸ばします。前腕の手のひら側が伸びるのを感じて下さい。 そして元の位置ににゆっくりと戻していきましょう。
2・同様に肘を少し曲げて行うと、違った筋肉もストレッチされます。つらいところが伸びて気持ちいいところを探しましょう。
②:ストレッチ方法【その2】
・前腕から指先にかけての屈筋群を伸ばすストレッチ方法です。
前腕屈筋群は、前腕の内側(手の平側)にあるので主に手首を曲げたり指を曲げて握る働きがあります。肘から手首、指までまたぐ多関節構造の筋肉と、一つの関節痛のみをまたぐ単関節構造の筋肉があるため、ストレッチも多様です。角度や伸ばしたい位置も確認しながらストレッチしていきましょう。
1・ヒジを伸ばした状態で人差し指から小指の4本指と手首を一緒に反らせて、肘関節、手関節と指の関節をまたぐ上腕前面の二関節筋や三関節筋をストレッチします。椅子に座り、状態を安定させて行いましょう。
2・ストレッチする腕の肘を伸ばしたまま頭でもう片方の手で指先を手のひら側から持ちます。そこから指先を手前に引き寄せ、手首と指を一緒に反らせます。
③:ストレッチ方法【その3】
・床に手をついて手首を強く反らせるストレッチ方法です。肘を伸ばしたまま手首を反らせる動きで、手関節と肘関節を曲げる働きのある二関節を中心にストレッチできます。
1・四つん這いになり、前は安全面を正面に向けて手のひらを床につけます丸このとき指先は自分の方に向いた状態です。そこから床を押すことでさらに強く前は安全面をストレッチできます。
立ったままテーブルや机に同じように手をついて行う方法もあります。
④:ストレッチ方法【その4】
・肘を曲げた状態で手首と指を同時に反らせるストレッチ方法。肘を曲げて、肘関節をまたぐ筋肉を緩めた状態で、人差し指から小指の4本指と手首を一緒に反らします。手関節と指の関節を曲げる働きのある屈筋群を中心にストレッチします。
ストレッチする腕の肘を曲げ、もう片方の手で指先を手の平側から持ちます。そこから指先を手前に引き寄せ、手首と指を一緒に反らせます。
⑤:ストレッチ方法【その5】
・指を付け根から反らせ手首から親指球まで伸ばすストレッチ方法。親指だけを反らせるストレッチ方法のバリエーションです。
親指を曲げる屈筋群をストレッチできます。親指の付け根だけでなく、親指全体を反らせるように引きます。親指以外の4本目は曲げた状態で行います。
親指を付け根から伸ばし当然親指全体も晒せることで、親指を曲げる働きのある手首から拇指球(親指を曲げるための屈筋群)を集中的にストレッチすることができます。
⑥:ストレッチ方法【その6】
・指先をついて体重をかけて首と指を強く反らせるストレッチ方法です。 片手の指先をついて伸ばすストレッチです。
肘を曲げた状態で親指を除く4本指と手首を晒せて手関節と指の関節を曲げる働きのある屈筋群を伸ばしていきます。
肩腕の肘を曲げ、前腕の前面を正面に向けて親指を除く4本指の指先を床に着けます。そこから床を押して4本指と手首を反らせます。
名前の由来
橈側手根屈筋の『撓』はこの筋肉が前腕の撓側を走行してることを意味しています。
また、『手根』は手首を示し、『屈』はこの筋肉の機能が屈曲させる機能、役割があることを示しています。
橈側手根屈筋の位置と起始部と停止部
橈側手根屈筋の位置
橈側手根屈筋は前腕の表層にあります。
起始部
上腕骨内側上顆(じょうわんこつないそくじょうか)
停止部
第2・3中手骨底の掌側
(第2中手骨のみ停止と記載している場合もあります)
橈側手根屈筋の大きな特徴
橈側手根屈筋は手関節の屈筋群の中でも最も強い筋肉です。
橈側手根屈筋の停止腱は第2、3中手骨に向かって手根管を通過します。それゆえ、橈側手根屈筋の腱の炎症は正中神経を刺激したり手根管症候群を引き起こしたりします。
マッサージのための機能解剖学
橈側手根屈筋の作用
・手関節の屈曲
・手関節の撓屈(手関節の外転)
・少しの肘関節の屈曲
・少しの前腕の回内
橈側手根屈筋は手首の前面を通過しているため、手掌を前腕前面の方へ引っ張ることにより、手関節が屈曲します。
又、この橈骨手根屈筋は手関節の前面の撓側を通過しているため、第2第3中手骨が前腕の撓側へ引っ張られると手関節は撓屈します。
触診方法とほぐし方
手関節の屈曲をひとつの筋肉の束として触診することは簡単です。上腕骨内側上顆から遠位に向かって触診すると、前腕前面の近位内側に屈筋群の膨隆を感じるでしょう。
橈側手根屈筋の起始腱を軽擦することは、この筋肉をほぐすマッサージに対してとても有効的です。また、筋腹に対しては軽擦法、四指揉捏法、強擦法が効果的です。
今回は下記のような橈側手根屈筋の触診方法とマッサージやほぐし方を解説していきます。
橈側手根屈筋の触診方法
前腕の屈筋群は、手を屈曲させて触診します。筋肉の束の構造は羽状で筋肉線維の走行は筋肉に対して平行です。
肢位:患者さんは仰臥位に寝てもらいます。患者さんの前腕は回外位になってもらいます。
1:他動的に手首を曲げ、組織を弛ませます。
2:施術者は患者さんの横、腰の位置に座ります。
3:外側上顆の遠位にある腕橈骨筋の筋腹を拇指で確認します。
4:拇指を内側の橈側手根屈筋上に動かし、肘関節皮線よりも遠位に保ちます。
5:患者さんの手関節屈曲と橈屈にに対して負荷をかけながら、適切な位置を確認します。
前腕屈筋群のマッサージやほぐし方
ほぐし方①屈筋群のストリッピング
1:患者さんに仰臥位をとってもらいます。肘をわずかに曲げて手関節を軽く曲げます。
2:施術者は患者さんの横、腰の位置に立ちます。(座っても可能です)
3:一方の手で患者さんの手を押さえ、腕を固定します。
4:もう一方の手の指関節または手根を患者さんの掌側の手首に当てます。
5:しっかりと組織を押圧し、指関節または手根をゆっくりと筋肉部に沿って、肘を越えて上腕二頭筋の遠位端まで滑らせます。
6:平行線に沿って、前腕屈筋(前面)を全て施術するまで同じプロセスを繰り返して前腕屈筋群をほぐします。
ほぐし方②個々の屈筋のストリッピング
1:患者さんには仰臥位を取ってもらいます。
2:施術者は患者さんの横の腰の位置に立ちます。(座っても可能です)
3:一方の手で患者さんの手を押さえ、腕を固定します。
4:しっかりと前腕の屈筋群を押圧し、拇指、指関節または四指をゆっくりと前腕屈筋の筋肉に沿って、肘を超えて上腕骨の遠位部まで滑らせます。
5:平行線に沿って、前腕の屈筋(掌側)を残らず処置するまで同じプロセスを繰り返します(最後は尺骨に沿って滑らすことになります)。
橈側手根屈筋のその他の詳細
硬くなる、弱くなる症状?
・硬くなると(短縮):手首の関節を伸展することが難しくなったり、動きに制限が起こります。
・弱くなると(伸長):橈側手根屈筋が弱くなると、手関節の屈曲、撓屈、尺屈させる動きが弱くなります。
共働筋
拮抗筋
●手関節の伸展
・長撓側手根伸筋
・短撓側手根伸筋
・尺側手根伸筋
関連痛領域
手首の掌側中央から外側側へ
その他の検査対象筋
・円回内筋
神経支配と血管供給
・支配神経:
正中神経 C5~T1
・血管供給:
橈骨動脈