今回は産後体型が崩れてしまう原因の「骨盤編」と「筋肉編」に続き、「体液の変化編」をお話ししていきます。
妊娠で血液のは薄くなり量は1.3倍に
妊娠すると骨格や筋肉だけでなく、血液も大きく変化していきます。女性の体は妊娠すると出産への準備も同時に行っていきます。出産の時には少なからず出血をするのですが、その出血に備えて血液を増やしていくのです。
ただ、血液を増やす といっても固体成分の赤血球などは簡単に増やせないので、血液成分である血漿(けっしょう)を増やすことで、薄い血液を増加させるのです。
血液が薄くなるとどうなるの?
このように血液が薄くなる状態を水血症(すいけっしょう)といいます。出産前になると血液は妊娠前に比べて30%ほど増加します。この薄い血圧の増加は、出産時の出血対策というだけでなく、お腹の赤ちゃんに栄養を供給しやすくなるというメリットもあります。
血液が固まりにくくなることで、血液が胎盤を通過しやすくなるのです。ただ、血液が薄くなるということは、酸素を運ぶために必要なヘモグロビン濃度も妊娠前より少し低い値になります。これによって貧血がおきやすくなるというデメリットもあります。
妊娠中の貧血の原因とは?
「妊娠中の貧血」について一つ知っておいて欲しいことがあります。
1966年には、妊娠貧血(妊娠中に貧血になること)が起きる頻度は妊娠後期で、およそ25%と言われてきましたが、現在では30%から40%と言われています。これは昔の人よりも水血症による貧血症状が増えたのではなく、運動量が減ったり、妊娠する年齢が以前より上がったりしたため、妊娠貧血が増えたのです。
この血液の変化は、体の使いやすさを生み、より運動不足へと傾かせてしまいます。また、産後の回復を遅らせてしまう原因にもなります。出産後、退院前に貧血検査をしますが、それ以降、特に定期検診というものを行うことがありません。
母乳育児を行うママさんだけでなく、産後体調の回復のためにも定期的な貧血検査を行い、しっかりと体を回復させて欲しいと思います。個人的には産後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、そして1年…少なくても年に4回は貧血の検査をされると良いと思います。
産後のむくみは妊娠中からケア
妊娠中からむくみをケアしないと、産後にたるんだままになります。 体の機能についていろいろ紹介してきましたが、これが最後の項目です。なぜ、妊娠すると体がむくむようになるのでしょうか?
学生時代に理科の授業で、濃度の濃い水溶液と濃度の薄い水溶液の間に半透膜を置いたら、水分が濃度の濃い方へ移動していくという実験をしたことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。理科の授業ではこれを浸透圧の実験と教えてくれました。人の体というのは、この浸透圧を使ってガス交換をし、栄養、そして水分を運んでいます。
人の体内の水分は3種類
人の体の水分を大きく分類すると3つあります。1つは血管の中にある血液…。もう1つが細胞の中にある細胞内液、そして3つ目が血管と細胞の間にある間質液というものです。
血液と細胞内液は、間質液を媒介してガス交換や栄養のやり取りをしているわけです 。一般に血液と間質液では、血液の方が濃度が濃いのです。ですから、血液の方にどんどん水分が移動していくことになります。
ところが、水血症になってしまうと血液の濃度は低くなるので、場合によっては間質液の方が濃度が濃くなってしまうことになり、水分が間質液に移動することによって量が増えていきます。これが 妊娠中のむくみに が起きる原因です。
皮膚のたるみは妊娠中から
身体のむくみは妊娠中からケアをしておかないと、産後の皮膚のたるみを引き起こすことになります。このたるみが体型を崩したり、不調を引き起こしたりする原因となります。
産後の体型の崩れは、骨格、筋肉、そして体液の変化が合わさって起こるもので、どれか1つだけ 対策をしても十分な効果は得られません。また 数週間で改善できるようなものではなく、ある程度の期間が必要なものであることがわかってもらえたと思います。