内転筋群の一つ恥骨筋について徹底解説していきます。
内転筋群は短内転筋、長内転筋、大内転筋が代表的な筋肉です。恥骨筋の作用は股関節の屈曲と股関節の内転の作用があります。恥骨筋はその筋肉の起始部である恥骨上肢が大腿骨にある停止部より前上方にあるため、大腿骨を前方へ引く結果、股関節の屈曲が起きます。
それに加え、起始部が停止部である恥骨筋線より内側にあるので、股関節の内転を起こす作用があります。また、恥骨筋が収縮すると、骨盤は前傾します。この時、腹筋が骨盤を後傾させて、この前方への傾きを抑制しています。恥骨筋は腸腰筋と同様に、足の上げ下ろし(股関節の屈曲)をするエクササイズによって恥骨筋を鍛える筋トレ方法になります。
また、この恥骨筋を鍛える筋トレに股関節の内転を加えれば、より一層効果のある筋トレ方法になります。股関節を伸展及び、外旋した状態で完全に外転させると、この恥骨筋をストレッチすることができます。
下記からは更に詳しく恥骨筋を解説していきます。
恥骨筋の大きな特徴とは?
恥骨筋は股関節の内転と屈曲において、速さより力強く作用するような機能になっています。
恥骨筋はどんな筋肉なのでしょう|その概要とは?
恥骨筋は短内転筋、長内転筋、大内転筋と共に、大腿部の内転筋群を形成している筋肉の一つです。これらの筋肉は内側骨盤帯の下方部と大腿骨をつなげています。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
恥骨筋はこれらの内転筋群の中では最も小さな筋肉であり、筋繊維は恥骨上肢と大腿骨の後方近位端の間で外側下方に走行しています。恥骨筋は足部が地面に接地してない状態では、大腿骨が外旋するとき、同時に内側かつ前方に大腿骨を引っ張ります。
この動きは、歩く走るなどの動作で踵接地を行う前の下肢のポジショニングに使われています。恥骨筋はサッカーやアメリカンフットボールでの蹴る動作でも使われています。足部が地面に接地してる時の恥骨筋の機能は、足が接地してない時とは違う作用や機能となります。
例えば、骨盤を大腿骨の上で安定させ、方向転換の動きを可能にしています。この恥骨筋の機能と他の内転筋群の機能なしでは、骨盤は膝に対して内側方向に移動し、下肢の安定やアライメントに異常を起こしてしまうことがあります。
恥骨筋と他の内転筋群の働きは、大腿骨の位置によっても変化しています。股関節が屈曲して大腿が前方にあるときは、内転筋群は骨盤を足の上に移動をするべく股関節を 伸展させています。股関節が伸展して大腿が後方にある場合には、内転筋群は下肢を前方に引き出して、股関節を屈曲させています。
大腿骨の位置によって交互に変わるこの機能は、歩く、走るなどの動作の際に一貫しています。
名前の由来
恥骨筋は櫛(くし)のような形(訳注:英語では「くしを意味する単語」)からこの名前がついています。
英語の書き方
『Pectineus』
・pectin:ラテン語の「櫛(くし)」を意味しています。
恥骨筋の位置は?
位置:恥骨筋は大腿三角の中にあります。
起始部・停止部はどこ?
起始部:恥骨上枝から起始しています
停止部:大腿骨後面の恥骨筋線の近位端に停止しています
内転筋群(恥骨筋)を伸ばすストレッチ方法
膝を曲げたまま股関節を外転します。これに股関節の伸展を加えると更に恥骨筋がストレッチされます。
内転筋群(恥骨筋)を鍛える筋トレ方法
恥骨筋は腸腰筋と同様に足の上げ下ろし(股関節の屈曲)をするエクササイズによって鍛えられます。このエクササイズには股関節の内転を加えれば一層筋トレの効果があります。
触診方法を解説
恥骨筋は大腿三角の中にあり、この部分には大腿動脈、大腿静脈、大腿神経があるため触診やマッサージすることは困難です。恥骨結合のすぐ外側に鼠径靭帯を見つけて、鼠径靭帯のすぐ下を触診してください。
恥骨筋に対して施術をしたいときは、このあたりを優しく圧迫や揉捏をします。しかし、ここは非常にデリケートな部分ですので患者さん自身にセルフマッサージの方法を教えてあげるとより良いでしょう。
今回は下記の様な触診方法を紹介します。
肢位:患者さんに腹臥位(仰向け)になってもらいます。
1:患者さんの横に大腿部に面して立ち、手の外側縁で恥骨上枝を確認します。
2:手を縫工筋に向かって外側遠位方向に滑らせます。
3:短内転筋の下行線維をたどりながら、恥骨筋と内側部の内転筋の間を触知します。
4:恥骨筋の筋肉の場所を確実に把握するために、負荷を加えながら患者さんの股関節の内転と屈筋をしてもらいます。
恥骨筋を含む内転筋群のほぐし方
今回は下記の様な内転筋群(恥骨筋を含む)をほぐす方法を紹介します。
恥骨筋を含む内転筋群のほぐし方①
【内転筋付着部の圧迫法】
1:患者さんには仰向けになってもらいます。
2:施術者は患者さんの横、膝の位置に立ちます。
3:拇指や四指を恥骨付着部上、恥骨稜の外側縁へ置きます。
4:しっかりと組織を押圧し、圧痛点を探します。その圧痛点をしっかり押さえてリリースします。
5:拇指や四指を恥骨稜に沿って後下方向に移動させ、各内転筋付着部を圧迫します。
6:大内転筋の付着部に達するまでこのプロセスを繰り返します。
7:このテクニックは患者さんの股関節を外転および外旋させて一方の膝関節を屈曲させ体勢で、四指を使って施術することもできます。
恥骨筋を含む内転筋群のほぐし方②
【股関節内転筋群のストリッピングと圧迫法】
1:患者さんには仰向けになってもらい、足を伸ばして股関節を少し外転させるか、または股関節を外転および外旋させ、膝関節を少し屈曲させます。
2:施術者は患者さんの横、膝の位置に立ちます。
3:拇指や四指(または両手の拇指)を大腿骨の内側上顆に置きます。
4:しっかりと組織を押圧し、恥骨弓の前面まで内転筋に沿って滑らせます。
5:今度も同じスポットからこのプロセスを繰り返し、毎回恥骨に沿って少し後ろで終了します。
6:どちらの手順を患者さんを側臥位にして、下の足を伸ばして上の足を股関節と膝関節で屈曲させるか、上の足を伸ばして下の足を股関節と膝関節を屈曲させて、薄筋をほぐすマッサージができます。
※ただし、これらの体勢だと生殖器に触れずに付着部治療することはできませんのでお勧めしません。
恥骨筋のその他の詳細
恥骨筋が硬くなる弱くなる症状
硬くなると(短縮):
短縮した恥骨筋は骨盤の前傾を起こします。それに加え、恥骨筋が短縮すると股関節を外転させる能力が制限されるとともに、両足が近づくような姿勢になります。
いずれの股関節内転筋群が短縮しても、筋肉が急激にオーバーストレッチされた時に損傷を受けやすくなります。
そのような 筋肉の損傷は内転筋群の肉離れで慢性的なものから、炎症期が長い急性のものまであります。損傷を受けた部分へのマッサージ方法は、治癒を促進し瘢痕組織の形成を防ぎ、再損傷の可能性を下げるでしょう。
弱くなると(伸張):
恥骨筋が伸張すると股関節を内転屈曲させる機能が低下します。
恥骨筋の共働筋
恥骨筋の拮抗筋
恥骨筋の神経支配
・神経:大腿神経
恥骨筋の血管供給
・血管:・大腿動脈・閉鎖動脈
恥骨筋の関連痛領域
・大腿部の内側
恥骨筋のその他の検査対象筋
・その他の股関節内転筋