今回は短内転筋について徹底解説していきます。
短内転筋は、大腿部の内転筋群の一部です。他の内転筋群と共に、両方の大腿をお互いに引き付ける時に強く働きます。股関節の内転筋群の6つの筋肉(大内転筋、小内転筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、薄筋)は通常の動きの中ではあまり使われないので、この筋肉を使う運動を積極的に行う必要性があります。
また、女性の内転筋群の機能低下により、下半身太りや太もものたるみにもつながります。短内転筋を伸ばすストレッチや鍛える筋トレ方法も紹介しますので、下半身太りや太ももの脂肪が気になる女性は、脚痩せダイエットにもなりますので、是非エクササイズをしてみて下さい!
しかし、内転筋群の長内転筋の機能や役割、位置がどこにあるのか、起始部と停止部などをよく理解したうえでストレッチや筋トレを行うとより効果が上がります。
短内転筋はどんな筋肉?|その概要
長内転筋と同じで、停止部である粗線を恥骨に向かって内側へ行くことで、股関節を内転させる作用があります。
また補助的な機能として股関節の屈曲の作用がありますが、これは起始部である恥骨が、停止部である粗線よりも前方にあることがその理由です。
大きな特徴とは?
短内転筋の起始部に付着する分厚い腱は、恥骨前面において最も内転筋群のなかで分かりやすい腱です。開脚した時に、内ももの上部に太い筋ができますよね!それが長内転筋の腱です。
名前の由来
短内転筋の「短」は、その筋肉が長内転筋よりも短いい事を意味し、そして「内転」は、この筋肉の働きを示しています。
英語の書き方
『Adductor Brevis』
・ad:ラテン語の「~の方向へ」
・ducere:ラテン語の「引く」
・brevis:ラテン語の「短い」
を意味しています。
短内転筋の位置は?
位置:短内転筋は大腿部内側に位置する筋肉です。
短内転筋は長内転筋より近位にあり、そしてより深層にある筋肉です
起始部・停止部はどこ?
起始部:・恥骨の前面(恥骨下枝外縁)に起始しています
停止部:・大腿骨の恥骨筋線・大腿骨粗線内側唇に停止しています
作用や役割を紹介
・股関節の内転
・股関節の屈曲
・股関節の外旋
短内転筋は股関節を内転させます。また、股関節の屈曲を補助する作用があります。
内転筋群(短内転筋)ストレッチ
短内転筋のストレッチ方法は、長内転筋と同じ方法でストレッチすることができます。しかし、より短内転筋を意識したストレッチをしたいのならば、股関節を伸展、および内旋させた状態で外転させると短内転筋をピンポイントで伸ばすストレッチになります。
下記リンクから長内転筋のストレッチ【厳選15種類】を下記リンクから紹介します。
内転筋群(短内転筋)を鍛える筋トレ方法
短内転筋を鍛える筋トレ方法は、両方の太ももで大きめのボールなどを挟み込み、抵抗を加えるようにして内転させるエクササイズによって短内転筋を鍛えることができます。
更に短内転筋を鍛える筋トレ方法【厳選12種類】を下記リンクから紹介します。
短内転筋の触診方法を解説
大腿の内側にある短内転筋は、直接触診することはできませんが内転筋群の一部として、短内転筋を触診することは可能です。
詳しく説明すると、大腿内側の内転筋群は恥骨下肢から坐骨結節の間にあります。その中の長内転筋は恥骨結合の外側に付着しています。短内転筋はその外側に、恥骨筋は恥骨枝の外側に付着しています。
それぞれの付着部は識別が難しいですが、恥骨結合から坐骨結節部では触診が可能です。恥骨への付着が最も分かりやすいのは、大きな腱である大内転筋と薄筋です。停止部の付着部は、大内転筋と薄筋を除き、触診が難しいです。大内転筋は大腿骨内転筋結節へ付着し、薄筋は脛骨粗面の下へ付着しています。筋肉の束の構造はすべて収束状です。
今回は下記の様な短内転筋の触診方法を紹介します。
肢位:患者さんに腹臥位(仰向け)になってもらいます(股関節は外旋位)。
1:患者さんの横に大腿部に面して立ち、手の外側縁で恥骨上枝を確認します。
2:手を縫工筋に向かって外側方向に滑らせます。
3:短内転筋の下行線維をたどりながら、恥骨筋の内側部の内転筋の間を触診します。
4:短内転筋の筋肉の場所を確実に把握するために、負荷を加えながら患者さんの股関節の内転をしてもらいます。
短内転筋を含む内転筋群のほぐし方、マッサージ
今回は下記の様な内転筋群(長内転筋)をほぐす方法を紹介します。
内転筋群のマッサージは、下記の方法ですべて共通のほぐしができます。
短内転筋を含む内転筋群のほぐし方、マッサージ①
【内転筋付着部の圧迫法】
1:患者さんには仰向けになってもらいます。
2:施術者は患者さんの横、膝の位置に立ちます。
3:拇指や四指を恥骨付着部上、恥骨稜の外側縁へ置きます。
4:しっかりと組織を押圧し、圧痛点を探します。その圧痛点をしっかり押さえてリリースします。
5:拇指や四指を恥骨稜に沿って後下方向に移動させ、各内転筋付着部を圧迫します。
6:大内転筋の付着部に達するまでこのプロセスを繰り返します。
7:このテクニックは患者さんの股関節を外転および外旋させて一方の膝関節を屈曲させ体勢で、四指を使って施術することもできます。
短内転筋を含む内転筋群のほぐし方、マッサージ②
【股関節内転筋群のストリッピングと圧迫法】
1:患者さんには仰向けになってもらい、足を伸ばして股関節を少し外転させるか、または股関節を外転および外旋させ、膝関節を少し屈曲させます。
2:施術者は患者さんの横、膝の位置に立ちます。
3:拇指や四指(または両手の拇指)を大腿骨の内側上顆に置きます。
4:しっかりと組織を押圧し、恥骨弓の前面まで内転筋に沿って滑らせます。
5:今度も同じスポットからこのプロセスを繰り返し、毎回恥骨に沿って少し後ろで終了します。
6:どちらの手順を患者さんを側臥位にして、下の足を伸ばして上の足を股関節と膝関節で屈曲させるか、上の足を伸ばして下の足を股関節と膝関節を屈曲させて、薄筋をほぐすマッサージができます。
短内転筋の作用や役割、機能的解剖
長内転筋は大腿内転筋群の一部です。恥骨筋、短内転筋、大内転筋、薄筋と共に股関節を内転させる機能や役割があります。短内転筋と恥骨筋は起始部より筋繊維の方向が似ていますが、短内転筋の方が恥骨筋よりも大腿骨上部の起始部が大きいです。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
短内転筋は、恥骨筋と長内転筋の深層に位置していて、直接的な触診は困難です。短内転筋は足部が地面に着地してない状態で大腿骨が外旋する際に、大腿骨を内側にかつ前方に引き出す作用があります。この動きは歩く、走るなどの動作でかかとの接地を行う前の下肢のポジショニングに使われています。短内転筋はサッカーやアメリカンフットボールでの蹴る動作にも使われています。
足部が地面に接地している時短内転筋の機能は、足部が接地していない時とは違うものとなります。例えば、骨盤を大腿骨の上で安定させ、方向転換の動きを可能にしています。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
この短内転筋の機能と、他の内転筋群の機能なしでは、骨盤は膝に対して内側方向に移動し、下肢の安定やアライメントに異常を引き起こしてしまいます。短内転筋と他の内転筋群の働きは大腿骨の位置によっても変化します。
股関節が屈曲して大腿が前方にあるときは、内転筋群は骨盤を足の上に移動すべく股関節を伸展させます。股関節が伸展して、大腿が後方にある場合には、内転筋群は下肢を前方に引き出して股関節を屈曲させます。
短内転筋のその他の詳細
短内転筋の短縮や伸長による機能低下は?
・短縮:短内転筋の短縮は長内転筋と同じです。短内転筋が短縮すると、股関節の完全外転に制限が出ます。股関節内転筋群が短縮していると、筋肉が急激にオーバーストレッチされたときに損傷を受けやすくなります。
そのような筋肉の損傷は、内転筋の肉離れで、慢性的なものから炎症期が長くない急性のものまであります。損傷を受けた部分への強擦のマッサージは治癒を促進し、瘢痕組織の形成を防ぎ、再損傷の可能性を下げるでしょう。
・伸張:短内転筋が伸張すると股関節を内転させる機能が低下します。
短内転筋の共働筋
短内転筋の拮抗筋
短内転筋の神経支配
・神経:閉鎖神経(L3-L4)
短内転筋の血管供給
・血管:・大腿動脈・閉鎖動脈
短内転筋の関連痛領域
・大腿部の内側
短内転筋のその他の検査対象筋
・その他の股関節内転筋