骨盤の歪みという言葉をよく見かけます。ゆがみ=悪いというイメージがありますが、そもそも骨盤は常に動いているもので歪むのも動きのうちです。
今回は骨盤の歪みや女性特有の骨盤の動き、骨盤と頭蓋骨の連動についてお話ししていきます。
良く動く骨盤は体調がいい
骨盤が止まった状態で見ても意味がないのです。その動き方が問題なのです。
常に「正しい位置の骨盤」があるわけでなく、緩んだり縮んだりする動きの中に、左右のアンバランスやねじれといった歪みを含みながら動くのが生きているリアルな骨盤です。
日々リズムをもって動き、周りの出来事にも対応して動く「生き生きとした骨盤」を把握しましょう。
いい骨盤と悪い骨盤とは
骨盤自体に良い悪いという概念はありませんが、「いい動き」「悪い動き」は確かにあります。
自分で確認するならば、例えば生理が終わった後に、骨盤が軽く感じるかどうかでしょう。思いっきり広がってからちじめば、身体が軽くなって爽快感があると思います。
生理中に骨盤が緩むのは自然なことです。足が重くなったり、腰が重痛くなったり、むくんだりしてもそれは当然のことです。
ただし、生理の後も同じ状態で調子が出ないようだったら生理で前後の骨盤の開閉運動が十分ではなかったということです。
骨盤が歪むとはどういうこと
そもそも固定した正しい身体のバランス、骨盤の形は存在しません。人は誰しも骨盤が歪んだり戻ったりするそれぞれの動きのパターン(クセ)を持っており、その自由度の大きさが 活力の大きさでもあります。
歪みが悪いと言う思い込みからは自由になった方がいいと思います。骨盤のゆがみ(特に左右差)は悪いことではなく、生きている限り必ず生まれます。
疲れが出ている時、確かに骨盤が歪んでいますが、これは「この先もうちょっと緩んで休もうとしている」かのように身体が向かいたい方向を読むヒントとした方がいいと思います。
そこで歪みが固定して変化が止まってしまわなければいいのです。大きく歪むことができる身体は、むしろ大きく変化するだけの体力があるということなのです。
しかし、歪みが固定されてしまっていたり、なおかつその歪みにより痛みが誘発されているようでしたら、骨盤矯正をすべきだと思います。
四肢がある動物には骨盤がある
人が四つん這いになった状態を想像すると、肩甲骨と骨盤はそれぞれ前足と後ろ足に接続しています。構造は四肢のある動物ならば 基本的に同じです。
哺乳類だけでなく、鳥類などにも骨盤はあります。恐竜の骨盤も面白い格好をしていますが、基本は同じです。
四肢がある動物に共通な構造として、骨盤の左右に寛骨(腸骨∔坐骨∔恥骨)があって、真ん中に仙骨があります。人間の場合、四足で歩く動物とあまり違わない構造のまま立って歩いてる分だけ、骨盤に元々大きな負荷がかかっているのです。
女性の出産も赤ちゃんの大きな頭蓋骨が骨盤を通過するので、他の動物よりも大変です。
骨盤は広がり縮まります
骨が「ゆるむ」「ちじむ」あるいは「広がる」「縮まる」という言葉はすでに一般的な感覚はあるものの、それを体感できる人は案外少ないのではないのでしょうか?
そこで、まずは 分かりやすい骨盤の腸骨の幅が広がる、そして狭まる様子を感じてみましょう。
まずは、呼吸の時、骨盤の動きを感じてみます。骨盤は1分間に12から16回程度、繰り返している呼吸と共に動いています。呼吸が深いとは、骨盤が滑らかに膨らんだり縮んだりすることそのものです。それは同時に骨盤に包まれている下腹が深く呼吸をすることを意味しています。
1・腰の横に 手を当てると、骨盤の上の腸骨に触れます。そのまま少し大きめにお腹で呼吸してみましょう。
2・骨盤の上のほうが息をする時に横に広がり、息を吐く時に 狭まるのが感じられると思います。
もう少し詳しく骨盤の動きを体感
今度は体感するのが少し難しくなりますが、骨盤は以下のような動きをしています。
女性の骨盤の動きを体感
第1に、呼吸のたびに動きます。
第2に、集中・興奮↔リラックスの波で動きます。
第3に、覚醒↔睡眠で動きます。
第4に、生理のリズムで動きます。
第5に、出産で動きます(生理は出産の縮小版)。
加えて季節の変化の中でも動き、長いライフサイクルの波の中でも動き続けます。
骨盤の動きと後頭骨の関係
骨盤は全身と同調して動いています。例えば頭蓋骨はまったく動くようには見えませんが、骨の継ぎ目でかなり動きます。意外に柔らかいのです。
水の入った頭の皮の中に頭蓋骨のパーツが浮かんでいるところを、イメージしてみてください。脂肪や筋肉の厚みがないので、骨盤よりむしろ後頭骨は動きを捉えやすいくらいです。
後頭骨にラムダ縫合という三角形のつなぎ目(左右の頭頂骨と後頭骨が逆V字に繋がっている部分)があり、特に骨盤が広がっているとき(たとえば生理中など)は、ラムダ縫合の辺りをさぐって指先を左右に動か 移動させると、骨のつなぎ目部分に段差(後頭骨側がへこむ)が感じられます。
骨盤が縮んでいる時は、後頭部は出っ張って丸い感じがします。逆に後頭部が全体として平べったい 感触の時は、骨盤は緩んでいるわけですね。人それぞれ後頭部の形は違いますが、出っ張ったり、平らになったり誰でもそれなりに動きます。
後頭骨と骨盤の連動を感じる
骨盤と後頭骨は連動しているので、後頭部のラムダ縫合に触れながら肛門にキュッと力を入れたり、元に戻したりしてみてください。頭の後ろがわずかにキュッと動く感じがしませんか?
骨盤の状態は上下をひっくり返した形で後頭部に反映されます。骨盤底部が特別に強く縮むと、頭のてっぺんが尖り、ウルトラマンのような感じになります。頭蓋骨以外にも顔の表情も実は変わるのです。
よく集中して骨盤の上の方が縮むと、目と目の間隔が狭まります。恋愛している時の表情の輝きはこれです。そして緩むと目と目の間隔が広がります。 骨盤が緩んでいる時は、ぽーとした抜けた顔になりますね。
ただし、緊張と興奮ばかりで、骨盤底部が縮む一方では心身は不安定になります。緩む余裕ができることが本当の集中を招きます。頭蓋骨と骨盤は基本的に同時に動きます。頭蓋骨の方がやや先に緊張しやすく、 緩むときは遅れる傾向があります。頭のてっぺんから、指の先まで全身が骨盤と連動して動いています。
手足の指で骨盤の状態を推測する
普段手は小指を中心に集中しますが、手をグーに握って小指に力がぐっと入りやすい場合は骨盤が広がっていません。骨盤が緩んで広がっていると小指に力が入りにくくなります。
手の力の要になる小指に力が集中できない状態が慢性化すると、親指や人差し指などの小指以外の指に常に余計な負荷がかかり続けて、腱鞘炎などにもなりやすくなります。
足では、親指に力が入るかどうかをポイントにすると骨盤の状態が見えます。骨盤が縮んでいると、親指の付け根あたりに体重が乗りやすく、足腰が軽いです。歩くにしても走るにしても足の親指の付け根で地面を蹴りますから、骨盤が縮んでる方がスムーズにさっさと 動けるのです。
骨盤が広がっている時は、足裏の外側より小指側に体重がかかるため、親指の付け根で地面を蹴りにくくなり、小指の関節に無理な力がかかって外反母趾(親指が小指方向に曲がって変形する)にもなりやすいのです。また 足裏の重心が外にかかり続けると、特に膝から下の外側の筋肉が張って、足の疲れを感じやすくなります。
そして足がむくむ場合もあります。日頃から後頭部の形や足腰、手などの感覚の変化を手がかりに、骨盤の状態を気にかけることで 骨盤の動きの様子が だんだん分かるようになってきます。