前回、産後の運動は軽い方がいい理由をお話ししましたが、今回は産後の骨盤底筋の運動はいつからどのように始めるのがいいのかをお話ししていきます。
また、尿漏れになってしまう理由や年齢を重ねた自分が尿漏れで困らないようにする方法もお話ししていきます。
産後1ヶ月から簡単骨盤底筋運動
産後は骨盤が開いた状態になっています。産後の今、骨盤底筋を鍛えて回復させると、年を重ねた時に尿漏れの心配がなくなります。
骨盤底筋運動の簡単バージョン
・仰向けに寝て、お尻を締めます。
①仰向けになって両足を揃え、両手を下腹部に当てます。
②肛門を締めおしっこを止める感じでゆっくりと力を入れます。10秒間キープし、ゆっくりと力を抜きます。これを6回繰り返しましょう。
※できるだけ1日5セットから6セットすることが おすすめです
産後3ヶ月からは強い骨盤底筋運動
特に産後の体は、出産を経験した人が思ってる以上に負担がかかっていて、それを回復させるためには、強い骨盤底筋運動で集中的なリハビリが必要になるほど だからです。
産後3ヶ月からの強い骨盤底筋運動を紹介します。是非、実践していきましょう。
骨盤底筋運動の強度バージョン
・仰向けに寝て、膝を立て、お尻を締める
①仰向けになり、足を肩幅に開いて、膝を立て、簡単バージョンと同じように両手を下腹部に当てます。
②肛門を締め、おしっこを止める感じでゆっくり力を入れます。10秒間キープし、ゆっくりと力を入れます。これを6回 繰り返します。
※できるだけ1日5セットから6セットすることが おすすめです
骨盤底筋運動は10年後に差がでる
実は、ここ数年「産後のケアは受けたいけど、育児が忙しく時間が無いからできない」という声をよく聞きます。また、一昔前までは出産による負担は自然と回復していたのだから、あえて産後の骨盤矯正をしなくても良いのではないかと考える人も多かったようです。
実際に産後なにもしなくても痛みは取れて行きますし、普通に生活していけるようにはなります。ですが、これは見かけ上だけで普通の生活ができるようになったと感じているだけで、実際には何もしなければ何一つ良くなることはありません。
尿漏れに悩んでいる女性は多い
現在、女性の間で尿漏れや骨盤臓器脱(膣から子宮などが出てくる状態)が増えており、女性全体では35から37%の方が尿漏れを起こすといわれています。この数字はあくまでも女性全体なので、尿漏れを起こしにくい20代も含んでいての話です。
別の報告では、40代で出産を経験していない女性だと34%の尿漏れを経験していますが、出産経験のある40代女性になると、実に57%もの方が尿漏れに悩まされているといいます。どうして女性に尿漏れが多いかというと、男性に比べて 尿道が非常に短いからです。男性の尿道はおよそ25cmといわれていますが、女性は4cmほどしかありません。
しかも、女性には男性のように尿道を締めるための前立腺がありません。もともと男性より尿漏れを起こしやすいというのに、出産によって括約筋(骨盤底筋群を形成する筋肉の一つ)を損傷するのですから、尿漏れが起こりやすくなるのは当たり前なのです。
年齢を重ねての尿漏れ改善は
尿漏れを起こす前から骨盤底筋のケアをしましょう。55歳以上の女性を対象とした調査で、尿漏れの改善を行った時にどういった結果になったかというものです。尿漏れを起こしている55歳以上の女性287人を対象に、症状緩和には効果的だといわれている骨盤底筋群トレーニングをおこなってもらい、その効果を検証しました。
トレーニングを開始してから、3ヶ月後、実に57%の人が症状の改善があったと感じていたという結果が得られました。確かに、私もこの骨盤底筋トレーニングをよく理解していますし、それなりに効果は出ていると感じています。
50代以降の女性だと、再発しやすいという実感があったのですね。このことに対する答えも、その論文には書かれていました。症状の改善があったという57%の方々の体を調べてみると、臨床的に意義のある改善は見られていなかったのです。
つまり、年齢を重ねてからいったん尿漏れを起こすと、個人ができる運動やストレッチなどでは、根本的な改善は難しいことが分かったのです。それならば、外科的な手術という手段を選択したらどうなるのかというと、さまざまな術式の中で再発率が低いと注目されているメッシュ手術であっても、手術後90日以内に尿が出にくくなる尿閉リスクと、1年以内に再手術などを必要とするリスクが高いことが分かっているのです。一度尿漏れを起こしてしまうと手術を受けても根本治療はなかなか難しい方が現実にいるのです。
中年の尿漏れは産後にケア
この尿漏れの原因は出産に伴う骨盤底筋群の損傷なのですが、これはケガと同様、早い時期でのケアを行うことで予防することができます。肉離れという怪我で考えてみたいと思います。
肉離れを起こすと、その部分がへ凹んでいるように見えます。それもそのはずで、筋肉が切れてしまっているから凹みが生じてしまうのです。この時、適切な治療を受けずに無理をしてその部分を動かしていると、その凹みは残ってしまい、ずっと違和感があるままです。10年後にいくら治療を受けても、改善するのは困難といえます。
出産時の骨盤底筋群の損傷は、この肉離れとほぼ同じです。何せ筋肉が裂けているのですから、正直なところ大怪我と同じです。帝王切開なら負担はかからないと考えてるかもしれませんが、骨盤底筋群が5kgもの重い胎児や羊水を支え続けているのですから、負担がかからないはずがありません。
たとえ、帝王切開であったとしても、出産後は肉離れの怪我と同様に早期の怪我をおこなう必要があるのです。それでは、早期のケアを行うとどうなるのでしょうか?これについては、厚生労働省が研究に対する予算を組んだのが2014年とまだ日が浅く、長期の経過を確認したデータはあまりないと思います。
しかし、イーバランス整体院の産後の骨盤矯正で尿漏れ改善の矯正と自宅で骨盤底筋運動をしてもらったママさんに、数年から10年後に尿漏れの話を聞くと、ほとんどのママさん達が今は尿漏れをおこしていないということです。ですから、中年の尿漏れは産後からケアをすると起こりにくいといえるでしょう。