話は人間の体ではなく、建物の話です。ピサの斜塔を思い浮かべてみてください。傾いた縦長の建物は不自然で、倒壊の危機もあります。年々傾きを増していたピサの斜塔は、そのままでは倒壊の危険があるため、以前から大掛かりな改修工事が行われていました。
その工事がやっと完了しました。調べによると、その傾斜がどのぐらい傾いてるのかと言うと、約6メートル弱も中心からズレているそうです。角度にすると5~6度しか傾いてないのですが、それでも柱や壁に大変大きな圧力がかかっているのです。
縦長のものが傾いたままでいるということは、極めて不自然で無理なことなのです。話を人間の背骨と骨盤に戻しますと、私たちはつい日頃、ピサの斜塔の傾きとは比較にならないほどの角度でお辞儀をしたり、前屈みになります。その上、その格好で荷物を持ち上げたりもします。
その時、バランスを取るために背中や腰側の筋肉は、私たちが思っている以上、意外なほど強い力で負担がかかり筋肉が緊張しています。
前かがみで物を持つとどのように負担がかかるのか?
例えばクレーンの支柱にはどのくらいの負荷がかかるのでしょうか?その答えは持ち上げた荷物の数倍の力がかかるそうです。人の体で前かがみで荷物を持ち上げようとする時の筋肉は、ちょうどクレーンの巻き上げ同線に似ています。クレーンの鋼線には、単に持ち上げる物の重さだけでなく、クレーンのアームが傾かないように、荷物の数倍の力がかかることになります。
ですから、クレーンの支柱には支柱の重さはもちろんのこと、重量物の重さと鋼線にかかる重さの合計がずっしりとかかってきます。 とにかく、前かかみで物を持つことは、背骨、腰骨、骨盤はおろか、背中の筋肉や腰の筋肉にも思わぬ負担をかけてることを忘れないようにしましょう。
動作や姿勢を改善|中腰は腰痛の大敵です!
中腰は若くて健康な椎間板は耐えられても、柔軟性を無くした人にはとてもきついです。椎体と椎体に挟まれ力を加えられる椎間板は、くるみ割りのイメージそのものです。
この原理を利用して軽い力であの硬いクルミの殻を簡単に破ってしまう道具です。実は人の体の中にもくるみ割りに似た力が作用しているのです。前かがみの物を持ち上げた時、椎骨の後方は筋肉でガッチリ固定されます。
この時の状態は、椎間関節(ファセット)がくるみ割りの蝶番に相当し、椎体と椎体に挟まれた椎間板がくるみに相当します。前かがみになったり、遠くにある荷物を取ろうとしたりするときに、荷物の重みと上半身の重みが作用して、椎間板には思わぬ大きな力がかかっています。
若くて健康の椎間板は、そのぐらいの力に十分耐えられるように設計されているのですが、老化などで柔軟性がなくなった弱い部分ができたりすると、小さい力で固いくるみの皮は弾けるように、椎間板がパンクします。
パンクしないまでも、椎間板や椎間関節に微妙なズレが生じたり、骨がもろくなっている骨粗鬆症の人では、目に見えないぐらいのような骨折が起こったりもします。これらが急性の腰痛の原因です。
中腰の姿勢は色々…朝の洗面、台所仕事、掃除や草むしりは腰痛の元
中腰の前かがみの姿勢は、背中の筋肉、腰の筋肉ばかりでなく、椎間板や椎間関節にもかなりの負担がかかります。筋肉の柔軟な若者ならともかく、運動不足で筋肉が衰えてる人や、筋肉の柔軟性を失っている人とで、椎間板が若さを失う年齢以降の人たちは、中腰の姿勢は大敵です。
極力ひかえることが、腰痛予防につながるのです。具体的には朝の洗面の姿勢、台所仕事での中腰、掃除機をかける姿勢、短いほうきでの庭掃除、前かがみでの草むしり、背中を丸めた状態で座っていたり、あぐらをかいているなど、それら全てが背骨、腰骨、骨盤や、背中の筋肉、腰の筋肉、お尻の筋肉にもストレスがかかり痛みを誘発します。
その中腰の姿勢で長い時間作業していて行き良い良く、腰を無理やり立ち上がったりすると、ぎっくり腰にもなりかねないので注意しながら、ゆっくり元の体勢に戻しましょう。