今回はローテーターカフ(回旋腱板)の4つの筋肉の一部、棘上筋(きょくじょうきん)について詳しく解説していきます。
棘上筋の位置や起始停止は?
棘上筋位置
棘上筋は肩甲骨の後面上方にある小さな筋肉です。この棘上筋は肩甲棘の上にある棘上窩かに入っており、その腱は肩峰の下を通過して上腕骨の大結節に付着しています。
棘上筋の起始部
肩甲骨の棘上窩
棘上筋停止部
上腕骨の大結節
棘上筋の作用を紹介
棘上筋の作用としては、肩関節の外転として作用します。棘上筋は肩の内側を通過しているので、肩関節を外転させることに適しています。
マッサージのための機能解剖学
肩関節は棘上筋によって一度、外転を始めると、その後はより強い三角筋の中部によって外転を続けます。
棘上筋は肩関節の外転筋としては弱いのですが、肩関節の安定性に重要な役割を果たしています。棘上筋は行っている仕事量に対しては驚くほど小さい筋肉で、棘上筋の機能は三角筋中部と協力して腕を外転させることですが、その障害のほとんどは、肩関節の固定筋としての仕事が原因です。
この機能は重いウエイトを持ち続ける、腕を上げた状態で作業するなどすべての回旋筋腱板活動の間作用しています。重いスーツケースやショーケースを持ち運ぶとき、棘上筋に障害を起こすことがあります。長時間コンピューターのマウスを使用するなどの、反復運動も回旋筋腱板に問題を起こすことが多々あります。その中でも、棘上筋腱は上腕骨頭のちょうど上方にて肩関節を通過し、大結節の外側に付着します。つまり、上腕骨頭が肩甲骨の関節窩に収まり、骨頭が下方へ動くことを防いでいます。
マッサージのための機能解剖学
しかし、棘上筋腱は肩関節が外転する時に、肩峰と上腕骨頭の間でこすれることによって、腱炎になりやすい場所でもあります。
棘上筋は4つの回旋筋の中で最も怪我をしやすく、患者さんはしばしばこの筋の腱板損傷のため、停止部での痛みを訴えることがあります。
棘上筋の機能的解剖
棘上筋は回旋筋腱板(ローテーターカフ)を構成する四つの筋肉のうちの一つです。棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょっかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)は一体となって、上腕骨関節窩に固定します。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
それぞれの筋肉には腕の動作中での異なる肢位で上腕骨頭を操作する役割があります。
回旋筋腱板(ローテーターカフ)による肩関節の動的な安定性がなければ、上腕骨頭は肩峰や上腕筋などの周りの骨に衝突してしまいます。それが滑液包、腱、神経、血管などの挟み込みの原因となります。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
特に外転動作中は、主に三角筋が肩を動かしますが、その間棘上筋は上腕骨頭を下方にうまく移動させます。これにより上腕骨頭が肩峰にぶつかって肩峰下滑液包や棘上筋腱が挟み込まれるのを予防します。
棘上筋腱は肩峰下に位置にするため、腱鞘炎、挟み込み、断裂などを起こしやすい筋肉です。この筋肉への外傷は一般的に、肩関節の機能を弱体化させますが、他の正常な機能のためには棘上筋と他の回旋筋腱板(ローテーターカフ)をしっかりと健康に保つことが大切です。
棘上筋のストレッチ方法
この棘上筋のストレッチは簡単ではありませんが、出来る限り肩関節を内転させればストレッチできるでしょう。
神経や血管の通り道を圧迫するので、手にシビレがある方は腕の角度を変えるとストレッチングするところが変わります。どうぞ下記をご参照ください。
1・横向きに寝て下になっているほうの手を形と同じぐらいにします。
2・徐々に体をうつ伏せにしていきます心地よく肩関節が引っ張られてる感じがしたら、この状態で10から20秒ほどキープしましょう。
3・体を元に戻し、今度は体をやや上にします。
4・そのまま徐々に体をうつ伏せにしていきます。心地よく肩関節が引っ張られる感じがしたらこの状態で10から20秒ほどキープしましょう。
5・体を元に戻し、今度は手をやや下側にします。
6・そのまま徐々に体をうつ伏せにして行きます心地よく肩関節の後ろ側が引っ張られる感じがしたら、この状態で10から20秒ほどキープしましょう。
●特に棘上筋をピンポイントで伸ばしたい場合は1と2を繰り返していくと良いでしょう。
棘上筋を鍛える筋トレ方法
ローテーターカフと呼ばれる回旋筋腱板は肩甲骨に付着する、四つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)も一度に鍛えることもできます。腕を高く上げるときなどに、肩関節を引きつけて肩関節を安定させます。
腕を高く上げるスポーツのウォーミングアップに適しています。この動きは水泳や野球、バトミントン、バレーなどの準備運動に効きますので、ぜひお試しください。
●クロールのように腕を回して肩関節の棘上筋を筋トレしましょう。
①:両手に水の入ったペットボトルを持ち片方の腕を上げます。この時姿勢にはとらわれずまっすぐ上に腕を伸ばします。
POINT1:脇の下が伸びるように大きく動かします
POINT2:10往復が目安ですが、難しければペットボトルの水を抜いて負荷を調節しましょう
②:肩を前に大きく回しながら反対側の腕も持ち上げます。脇の下を伸ばして、肩甲骨を上げる意識で行うと良いでしょう。
NGストレッチ:肘が曲がってる肘が曲がると脇の下が伸ばせず肩の後面に効かせれず、効果がうすれてしまいます。
棘上筋の触診方法
肩甲骨の近くの肩甲棘(けんきょうきょく)を探します。棘上筋は肩甲棘の上から肩峰まで比較的簡単に触診ができます。肩峰(けんぽう)のすぐ横の付着部も触診が可能です。
筋肉の束の構造は収束状で筋肉線維の走行は水平です。
今回は下記のような、棘上筋の触診方法を解説していきます。
肢位:腹臥位で患者さんの腕は体側に置きます。
1・拇指で肩甲棘を触診します
2・拇指を肩甲棘より上方、棘上窩の方へ動かします
3・棘上窩の筋腹を確認します
4・棘上筋腱を追って、肩峰下から上腕骨の大結節をたどっていきます
5・肩さんの肩関節外転に対して負荷をかけながら施術者は適切な位置を確認します
棘上筋のマッサージや整体、ほぐし方
棘上筋の触診とマッサージのためには、肩甲棘を覆っている僧帽筋を押して深層にそある棘上筋を探さなければなりません。棘上窩に向かって押し込んで、強擦するのが一般的な方法ですが、今回は下記のような方法をご紹介します。
A:棘上筋のストリッピング整体
1・患者さんは腹臥位を取ります。施術者は患者さんの頭側に治療する側の方を向いて立ちます。
2・拇指を筋肉の内側端、肩甲骨上角に置きます。
1・拇指で下向きに深く棘上窩を押圧しながら、拇指が肩峰で止まるまで筋肉に沿って外側に滑らせます。
2・このプロセスは四指または肘を使って行うこともできます。
B:棘上筋の圧迫整体
・患者さんは腹臥位を取ります。施術者は患者さんのそばに立ちます。
・患者さんの治療する側の手を患者さんの腰に回して肩を内旋させます。
・上腕骨大結節の棘上筋腱付着部まで拇指を肩峰の下の三角筋中部より深く押圧します。
その他の棘上筋の詳細
棘上筋が硬くなる、弱くなると
棘上筋が硬くなると(短縮)
肩関節の内転が制限されます。
棘上筋が弱くなると(伸長)
肩関節外転の機能が低下し、肩関節の動揺性が大きくなります。
棘上筋の共働筋
肩関節外転筋:
・三角筋中部
棘上筋の拮抗筋
神経支配と血管供給
神経支配:肩甲上神経
血管供給:肩甲上動脈