まずは、半膜様筋の大まかな解説をしていきます。臀部と大腿の後面をさす「ハム」という語を語源とする「ストリング」は大腿二頭筋、半腱様筋、および半膜様筋から構成される大腿の後面の筋肉の旧式名称です。
これらの筋肉は股関節と膝関節の二関節をまたぐので、これらの関節の運動と固定の重要な役割を担っています。
ハムストリングスの半腱様筋は、股関節の後面を走行しているため股関節の伸筋群であり、膝関節の後面を走行しているため、膝関節の屈筋群でもあります。また、膝関節が屈曲している場合は、下肢が回旋できるので、脛骨の内側に停止する半膜様筋は膝関節を内旋させることができます。
ハムストリングスはいずれも股関節の伸展と膝関節の屈曲を起こします。とはいえ、半膜様筋と拮抗する筋肉の収縮状態によって、ハムストリングスが股関節の伸展のみ、膝関節の屈曲のみ、またはその両方を一度に作用するように機能します。
具体的に言うと、大腿四頭筋が収縮している時は膝関節の屈曲機能は抑制され、ハムストリングスは股関節の伸展を起こします。また、股関節の屈筋群が収縮している時は股関節の伸展機能は抑制され、ハムストリングスは膝関節の屈曲のみに働きます。
半膜様筋の拮抗する筋肉が収縮していないとき、ハムストリングスは股関節の伸展と膝関節の屈曲を同時に作用する機能があります。さらに、半膜様筋は脛骨付近の内側に停止しているので、膝関節が屈曲した状態であれば膝関節を内旋させます。
下記からは更に詳しく半膜様筋を解説していきます。
半膜様筋の大きな特徴とは?
半膜様筋はハムストリングスの中でも最も大きな筋肉です。半膜様筋は半腱様筋、膝窩筋、薄筋とともに膝関節を内旋させます。ハムストリングスは、踵が地面につく時に収縮し、骨盤を後ろへ引いて身体の直立姿勢を保ちます。
どんな筋肉なのでしょう?その概要
半膜様筋と半腱様筋は両方とも膝窩筋の内旋に関与しますが、それは膝窩筋と同様の働きです。これらの筋肉はどちらも膝関節をまたいでいるので、内側部の動的安定性にも関与しています。
名前の由来
半膜様筋もハムストリングの一つです。ストリングスはハム(もも肉)のような3つの分厚い筋肉が、付着部に長い腱を持っているのが名前の由来です。肉の加工場では、かつて豚のもも肉がそ腱(ストリングス)によって吊るされていました。
半膜様筋の「半」は半分であることを、また、「膜様」は、半膜様筋が付着する腱が広く分厚く、筋肉の近位部を包んでいる腱膜へと膜状に広がっていることを示しています。半腱様筋のほぼ半分は膜状の組織でできています。
英語の書き方
『Semimembranosus』
・semi:ラテン語の「半分」
・membranosus:ラテン語の「膜」を意味しています。
位置はどこにあるの?
位置:
ハムストリングスは大腿後面に位置します。そのうちの半膜様筋は二つの内側ハムストリングスの深層部にある方です。
起始部・停止部は?
起始部:坐骨結節から起始しています
停止部: 鵞足(脛骨の前内側付近)に停止しています
役割、機能的解剖を解説
半膜様筋は、大内転筋と半腱様筋の間にあり、ハムストリングスの中でも最も内側に位置している筋肉です。起始部である大殿筋の下の坐骨結節に付着している部分を除いて、この筋肉は大腿部後方の表層に位置しています。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
ハムストリングスは大腿四頭筋の拮抗筋としてよりは、主に姿勢を保つ筋肉としてよく使われています。また、大殿筋と腹直筋を補助して骨盤の後傾を保ちます。
腹直筋のように半膜様筋は多関節筋であり、股関節と膝関節をまたいでいます。半膜様筋は足部が地面に着地していない時、大腿二頭筋、半腱様筋と共に大腿骨を後方へ引き、股関節を伸展させる作用があります。
この動きは歩く、走るなどの動作の際に、脚を後方にスイングする時に使われています。動きが減速する際には、ハムストリングスは伸張しながら収縮するのです。この時、大腿四頭筋が過剰に強い場合、またはそのストリングスが拘縮してる場合には、ハムストリングスに障害や怪我をもたらす可能性があります。
下肢が固定されている時には、ハムストリングスは強力な大臀筋と共に骨盤を後方に引いて、膝と足のライン上に置き、体をまっすぐに維持する機能を持っています。このヒップ・ヒンジングの機能は、「起立する」、「ものを持ち上げる」、「飛ぶ」などといった足で地面を蹴る動作などの際に、特に重要な役割を担っています。
ハムストリングスは膝を屈曲させ、半腱様筋と半膜様筋は膝を内旋させる働きも持ちますが、この動きは膝が軽度屈曲している時のみ可能です。
膝の完全伸展時は大腿脛骨関節がロックされているので、回旋動作は起こりません。屈曲した膝の回旋動作は、体重荷重運動において進行方向を変えるときに役立っています。この動きは「ピポット動作」として知られ、テニス、サッカー、アメリカンフットボール、バスケットボールなどの様々なスポーツでよく見られます。
半膜様筋のストレッチ方法
半膜様筋のストレッチ方法は、半腱様筋と同様におこないます。膝関節を伸展させたまま、股関節を屈曲させるとストレッチ効果が得られるでしょう。 また、股関節を外旋させ、そしてやや外転させつつ屈曲を行い、膝関節を完全伸展すると半膜様筋がストレッチされます。
半膜様筋を鍛える筋トレ方法
半膜様筋を鍛える筋トレ方法は、半腱様筋と同様におこないます。大腿二頭筋の筋トレ方法で効果のあるレッグカール(ハムストリング・カール)で最もを効果的に半膜様筋を鍛えることができますが、この筋肉により重点を置くならば、屈曲の可動域全体を通しての膝の内旋位を保ち、起始と停止が一直線上になるようにすると、より半膜様筋を鍛える筋トレ方法になります。
触診方法を解説
半膜様筋に触診方法は大腿の後面内側で簡単に触れることができますがハムストリングス(大腿二頭筋の長頭と短頭、半腱様筋、半膜様筋)や薄筋、縫工筋、大内転筋、大腿広筋を各々触診するのは経験が必要となります。大腿二頭筋は外側縁を腓骨筋へ付着しています。半膜様筋は脛骨か内側へ付着しています。
半腱様筋は脛骨への付着部では識別が非常に難しいです。ハムストリングの起始部は坐骨結節かに感じることができます。大腿二頭筋と半膜様筋の構造は羽状で、半腱様筋の構造は半羽状です。その事を踏まえて、まずは坐骨結節を見つけて下さい。その腱は半腱様筋の件の深部にあります。
とても敏感な部分でもありますので半膜様筋は優しく触診し、ほぐしたりマッサージすることをお勧めします。今回は下記の様な半膜様筋の触診方法を紹介します。
肢位:患者さんに腹臥位(うつ伏せ)になってもらいます。(膝関節は軽く屈曲位にコントロールします)
1:患者さんの横の大腿部に面して立ち、手で膝窩(膝裏)内側付近の縁を確認します。
2:指先の拇指や四肢を使って、坐骨結節に向かって近位方向に滑らせます。
3:薄筋の後方内側の半膜様筋の筋繊維を、大腿部の中心辺りまでたどります。
4:半膜様筋の筋肉の場所を確実に把握するために、負荷を加えながら患者さんの膝関節の屈曲と内旋をしてもらいます。
半膜様筋のほぐし方を紹介
ここでは、ピンポイントの大腿裏のマッサージよりもハムストリングス全体(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)をほぐすためのマッサージ方法を総合的に紹介します。
強擦法はハムストリングスの起始部にある分厚い腱に対して効果的なほぐし方、マッサージ方法です。筋腹に対しては軽擦法、揉捏法、強擦法、叩打法の全ての手技が効果的です。半腱膜筋の停止付近の腱は膝の後内側で、半腱様筋の腱の浅分で触診することができます。
とても敏感な部分でもありますので半膜様筋は優しく押すことをお勧めします。今回は下記の様なほぐし方やマッサージを紹介します。
半膜様筋のほぐし方①
【半膜様筋のストリッピング】
1:患者さんにはうつ伏せになってもらいます。
2:施術者は患者さんの横、下腿(ふくらはぎ)の位置に立ちます。
3:手根、拇指、または前腕や肘頭を膝関節の上、ハムストリングスの内側へ置きます。
4:しっかりと組織を押圧し、坐骨結節上の付着部まで筋肉に沿って滑らせます。
5:今度は膝窩(膝裏)中央からこのプロセスを繰り返します。
6:外側も同じプロセスを繰り返します。※注意上記の方法を始める時は膝の裏側の膝窩の押圧は避けます。
半膜様筋のほぐし方②
【半膜様筋のクロスファイバーフリクション】
1:施術者は拇指を患者さんの坐骨結節へのハムストリングスの付着部に置きます。
2:しっかりと組織を押圧し、押さえてリリースします。
3:代わりに両拇指を組織が柔らかくなったと筋肉の緊張が緩和されたと感じられるまで左右に動かします。
半膜様筋が硬くなると弱くなると?
・硬くなると(短縮):半腱様筋と大腿二頭筋と同じで、ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)の短縮によって骨盤の後傾が生じるとされています。
また膝関節を伸展した状態で股関節を屈曲させることが困難になってしまいます。これは座っている状態において、膝を伸ばしたままつま先を触ろうとしてできなかった場合などによくわかります。
・弱くなると(伸長):半腱様筋と大腿二頭筋と同じで、膝関節の屈曲と、股関節の伸展の機能が低下するでしょう。
半膜様筋のその他の詳細
共働筋
◆膝関節の屈曲:
・その他のハムストリングス(半腱様筋、大腿二頭筋)、腓腹筋、足底筋、薄筋、縫工筋、膝窩筋
◆股関節の伸展:
◆膝関節の内旋:
拮抗筋
◆膝関節の伸展:
◆股関節の屈曲:
◆膝関節の外旋:
神経支配
・神経:坐骨神経
血管供給
・血管:大腿深動脈
関連痛領域
・下肢後面、臀部から下腿中ほどまで