前脛骨筋は足先を反らすための筋肉です。歩く時、坂の上り下がりや階段の昇降、足裏の土踏まずのアーチの保持など日常的な動きや運動時にもとても役立っています。今回はこの前脛骨筋について更に詳しく紹介していきます。
前脛骨筋の名前の由来
前脛骨筋は脛骨の前方のよく目立つ部分に存在しているのでこの名前が付いています。
前脛骨筋の英語の書き方
【Tibialis Anterior Muscle】
「tibialis」:ラテン語の「脛骨」
「anterior」:ラテン語の「前方」
前脛骨筋の位置
前脛骨筋は前方部の位置関係において最も大きく表層にあります。人体の筋肉のなかで筋肉量に対する筋力で考えていくと人体の中で最も強い筋肉です。前脛骨筋の停止腱は足関節の前面を通り、足の内側面に停止しています。
前脛骨筋の起始と停止
起始:脛骨の外側顆、脛骨の外側近位1/2、下腿骨間膜上方1/2
停止:第1中足骨底面、内側楔状骨
前脛骨筋の役割の大きな特徴
前脛骨筋は筋肉量に対する筋力からすると前脛骨筋は人体の中で最強の筋肉です。
私たちが立っているときや歩いているときに、体重を前後左右にバランスをコントロールしていて、この筋肉は底屈筋群とともに身体バランスの保持のコントロールにとても役立っています。
前脛骨筋の作用
・足関節背屈
・足の内反
前脛骨筋の機能的解剖
前脛骨筋の役割としてはその起始部や停止部の位置関係からも、足部の内側を支えるのに効果的な位置にあるといえます。前脛骨筋が作用すると、足関節は背屈(足の甲を反る動き)し、底屈筋(足の甲を伸ばす)に対しては拮抗筋として働きます。
ジョギングやウォーキングで足の外側に体重をかけると、前脛骨筋は強く収縮せざるを得なくなります。またこの筋肉は内反の時に縦アーチの保持を助けます。
前脛骨筋は足関節の前面を通過する足関節を背屈筋(足の甲を反らす筋肉作用)です。また 、足の内側面に停止しているため、前脛骨筋が足の内側面を上の方に引くことで、足の内反(足首が内側にそれる動き)にも前脛骨筋は機能します。
この下半身でがんばっている筋肉は、歩行において重要な役割を果たしているのがお分かり頂けたでしょうか?
歩くときの一歩目に足を踏み出して足を振るとき、足を下腿の前側に近づけるように、下腿を戻すときはこの筋がコンセントリック(筋肉が縮みながら力を作用すること)に収縮します。
反対にかかとが着いて足が地面へ降りるときのタイミングやスピードをコントロールするときはエキセントリック(筋肉が伸びながら力を作用すること)に働きます。私たちが坂道を上るときはさらに強いコンセントリック収縮を、また、坂道を下るにはさらに強いエキソントリック収縮がこの前脛骨筋の機能として働いています。
土踏まず(内側縦アーチ)を保持
前脛骨筋は足底部の内側縦アーチを保持するのに機能しています。いわゆる土踏まずのことですね。前傾骨気を含め足部内在筋の筋力低下により偏平足ななってしまいます。筋力低下以外に体重の増加、立ちっぱなしの環境などでも偏平足になる原因になります。
前脛骨筋が硬いとどうなる?
前脛骨筋が硬くなると脛の横側に痛みや張り、だるさがでます。夕方や仕事から帰って家でくつろいでいる時に症状を感じるならば、この前脛骨筋の疲労が溜まっているからですね。
また、足の外反と足関節の底屈が困難になり、内側縦アーチがより高く(ハイアーチ)なります。
ハイアーチ(凹足)について
ハイアーチは足関節や足の硬さにより内側アーチが過度に高くなります。アーチの高くなった凹足は、内側アーチの増大と過度の足部回外を呈します。この形状は 衝撃、吸収の低下と、足部外側構造への過度のひずみを引き起こします。これらの構造を運動連鎖的に考えると、膝関節や股関節、脊柱まで影響があります。この形状は膝関節や股関節の内反姿勢と関連することも多いです。
前脛骨筋が弱いとどうなる?
足関節の完全な背屈ができなくなります。それは歩行の際に前脛骨筋が弱くなっていると踵を着地したときに土踏まずが地面に付いてしまいます。いわゆる偏平足ですね。
それは着地の際に足柄の衝撃を和らげることができず足裏を始めスネの外側ふくらはぎに疲れや痛みが現れます。
扁平足について
よく整った内側縦アーチは関節や靭帯、足の内在筋による動的な安定力とともに受動的な聴力を必要とします。 アーチの落ちた扁平足は、内側アーチの減少と過度の足部回内を呈しています。この形状は、力を伝達する能力の低下と、足部内側構造への過度のひずみを引き起こします。これらの構造を運動連鎖的に考えると、膝関節や股関節、脊柱にまで影響があります。この形状は膝関節や股関節の外反姿勢と関連することも多いです。
前脛骨筋の触診方法
前脛骨筋は脛骨の外側で最も簡単に触れることができる筋肉です。脛骨と腓骨の間の下腿前面で触診してみましょう。
特に膝下から足首までスネの内側は簡単に触診可能ですが、足首の内側を過ぎると、基本的に区別が難しくなります。筋肉の束の構造は平行状であり、筋肉線維の走行は足首を超えるまではほとんど斜めです。
肢位:患者さんに仰臥位(仰向け)になってもらいます。
1:患者さんの足部側に立ち、拇指を患者さんの脛骨外側に置きます。
2:拇指を外側方向に、前脛骨筋の筋腹までずらします。
3:遠位方向への触知を、筋肉が腱となって収束する足関節前方まで続けます。
4:患者さんの足関節背屈に加え、適切な位置を確認します。
前脛骨筋のほぐし方・マッサージ
【ストリッピング】
1:患者さんには仰向けになってもらいます。
2:施術者は患者さんの足の位置に立ちます。
3:もう一方の手で足を固定します。
4: しっかりと組織を押圧し、四指を脛骨の付着部まで筋肉に沿って滑らせます。
5:このプロセスは重ねた両手の拇指または手根や母指球を使って施術してもいいです。
前脛骨筋の共働筋
足関節の背屈
・長趾伸筋
・長母趾伸筋
・第3腓骨筋
足関節の内反
・後脛骨筋
前脛骨筋の拮抗筋
足関節の底屈
・腓腹筋
・ヒラメ筋
・足底筋
・後脛骨筋
・長趾屈筋
・長母趾屈筋
・長腓骨筋
・短腓骨筋
足の外反
・長腓骨筋
・短腓骨筋
・第3腓骨筋
前脛骨筋の神経支配
・神経:深腓骨神経 L4-5 S1
前脛骨筋の血管供給
・血管:前脛動脈