今回は膝関節の痛みの種類その①|膝内障、変形性膝関節症、突発性大腿骨顆部壊死について詳しく解説していきます。
膝関の痛みの総称の膝内障とは
・膝関節の内側半月板、外側半月板、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯や関節包の損傷障害を総称して「膝内障」と言います。
ただし、損傷・傷障害箇所が特定できなければ、それぞれの疾患名で呼ばれるので判断がつく前の総称であり、最近はあまり使われなくなってきています。
膝内障の疾患概念
・靭帯損傷以外の代表としては、内外半月板損傷、関節内遊離体、離脱性骨軟骨炎、膝蓋軟骨軟化症、膝突発性骨壊死、棚障害、関節内腫瘍や腫瘤、大腿四頭筋断裂、膝蓋腱断裂などがあります。
棚障害とはどのような症状?
・膝関節内にある滑膜ひだ(棚と呼ばれる)の形態に異常がある場合、大腿骨関節面に障害が生じ、膝の関節運動の際に引っ掛かりを伴った膝関節の痛みや弾撥が起こることがあります。
・ストレッチ、アイシング、リハビリテーションによる保存療法を行います。保存治療の効果がなければ、関節鏡手術を行います。
変形性膝関節症の原因、症状、検査や診断方法、改善や治療について
変形性膝関節症の疾患概念とは
変形性膝関節症は加齢により膝関節の機能が低下して軟骨の摩耗、半月板の変性、断裂、骨の変性や変形が生じる膝関節の疾患です。膝関節に炎症を起こし進行すると、膝関節の変形が顕著になり、慢性的な膝の痛みや膝関節可動域の制限により、歩行が困難になるなどADLが障害されます。
患者数、約700万人以上と推測されている変形性膝関節症は、誰もが起こりうる身近な症状ですので、日々注意しながら生活していきましょう。
変形性膝関節症の誘因や原因とは
・加齢による膝関節周りの筋肉の筋力低下により、 膝関節機能の低下が主な原因です。
・軟骨の摩耗、半月板の変性、断裂、骨の変性、変形が徐々に生じ、膝関節周りの痛みを伴う関節炎を発症します。
・加齢以外の明らかな原因があって発症するものを、二次性関節症といいます。主な原因としては、膝関節内骨折、靭帯損傷、化膿性膝関節炎、痛風などの疾患があげられます。
変形性膝関節症の症状臨床所見とは
・初期には歩行開始時や、正座からの立ち上がりの時に、膝関節の内側に痛みが見られるのが特徴です。
・さらにその症状が進行すると、歩行や階段の昇り降りの時など膝関節の運動に伴い、常に膝関節に痛みが生じます。
・膝関節の骨の変形が進むと、立っている状態での膝関節屈曲やO脚などが顕著になります。
・触診で膝関節裂隙 の圧痛、膝関節の腫脹の症状が現れます。ときに、膝関節の滑液が過剰に分泌され、膝関節の水腫(膝関節に水がたまりすぎて腫れる症状)を呈します。
変形性膝関節症の検査診断分類方法は
・診断は問診、視診、触診、関節液検査、X線検査、血液検査、MRIで膝関節の状態を判断します。
・関節リウマチ、単純性関節炎、半月板損傷、靭帯損傷、化膿性関節炎、痛風や偽痛風による結晶性関節炎など鑑別診断が必要です。
膝関節にみられる痛みの鑑別分類
痛みの場所:
・内側…半月板損傷、変形性膝関節症、特発性大腿骨顆部骨壊死、鵞足
・外側…外側半月板損傷、腸脛靭帯炎、特発性大腿骨顆部骨壊死
・前方…膝蓋大腿関節障害、膝蓋靭帯炎
・膝窩…膝関節後方の構成要素の異常を必ずしも意味しない
痛みの出る状況:
・安静時、夜間…関節リウマチ、痛風、偽痛風、感染性膝関節炎、骨髄炎、腫瘍性疾患
・歩き始め、動き始め…膝蓋軟骨軟化症、変形性膝関節症
・長時間の歩行、立位…変形性膝関節症
・階段の昇降時、イスから立ち上がる時…膝伸展機能の障害
膝関節水腫の触診方法
膝蓋上嚢をわしづかみして、下腿・膝窩方向へ握力をくわえながら、反対側の手指で膝蓋骨を押します。関節内に水(滑液)か血液が溜まっていれば、膝蓋骨が水上を浮遊する感触が手に伝わります。
膝裏に起きる痛みの鵞足炎とは?
鵞足炎とは、膝の内側、腓骨上部の縫工筋、薄筋、半腱様筋が付着してる形状がアヒルの足に似ていることから、鵞足部と呼ばれています。ランニングやサッカーなどで下肢の負荷がかかると、鵞足炎を起こすことがあります。膝の内側に痛みを感じます。
変形性膝関節症の治療方法とは
・保存療法を行い、効果がない場合に手術を検討します。
・手術は関節鏡による鏡視下手術、骨きり術や人工関節置換術などがあります。人工関節置換術は、膝関節表面全体を置き換える全置換術と、一部分を置き換える単外顆置換術の2種類があります。
・疼痛やADL制限が持続すると、うつや認知症を誘発することがあります。
変形性膝関節症の保存療法とは
・生活指導…過度の運動の制限、肥満解消など
・物理療法…温熱療法、冷治療など
・薬物療法…内服薬、関節内注射など
・装具療法…サポーター装着など
・運動療法…筋力トレーニング、関節可動域訓練など
特発性大腿骨顆部壊死を詳しく解説
大腿骨顆部骨壊死が起こる疾患です。原因は不明ですが、顆部骨髄に栄養血管侵入路が限られている解剖学的な特性や、膝にかかる荷重によって起こり得るような骨折もその一つと考えられています。
膠原病などで投与される副腎皮質ステロイド薬によって起こる骨の壊死は、ステロイド性骨壊死と呼ばれています。
特発性大腿骨顆部壊死の誘因や原因
・特発性大腿骨顆部壊死の原因は不明ですが、血流障害や繰り返される外傷などが骨壊死を進行させていると考えられています。
・中高年女性に多くみられることから、骨粗鬆症による骨の脆弱化が背景にあり、軟骨化骨に骨折が起こることで発症するものといわれています。
・特発性大腿骨顆部壊死の発症部位は体重のかかる内側顆部に多いのが特徴です。
特発性大腿骨顆部壊死の症状・臨床所見
・主な症状としては膝の内側の突然の鋭い痛みで発症します。その痛みは歩行時に強いですが、夜間痛を伴うこともあります。
・疼痛や関節水腫の合併によって関節可動域が制限されることもあります。広範囲な陥没した骨壊死を放置すると、軟骨変性骨形成により変形性膝関節症に進行してしまいます。
特発性大腿骨顆部壊死の検査方法・診断・分類
・早期診断にはMRIが有効です。
・X線像では発症後1ヶ月から2ヶ月は変化は見られませんが、進行すると関節面の陥凹と骨透亮像が見られます。
特発性大腿骨顆部壊死の分類(腰野)
Stage1:発症期 病的所見(ー)
Stage2:吸収期 荷重面に骨吸収像(+)
Stage3:完成期 半月板の骨硬化像と石灰板(+)
Stage4:変性期 石灰板消失、骨棘形成、関節裂隙狭小化
特発性大腿骨顆部壊死の治療方法
・壊死の範囲が小さい場合には、足底板によって下肢の荷重軸を内側から外側に移動させたり、杖の使用、体重のコントロール、筋力訓練、鎮痛薬の使用などを保存的療法で症状の軽減をはかります。
・顆部の破壊が進行して、膝関節の痛みが軽快しない場合は、症状に応じて骨きり術、人工膝関節単顆置換術や全置換術を行い特発性大腿骨顆部壊壊死の治療、改善施術をおこないます。