棘下筋は、肩甲骨の肩甲棘(けんこうきょく)の下の方にあることから、この名前がつけられています。
棘下筋(きょっかきん)は棘上筋(きょくじょうきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)、小円筋(しょうえんきん)と合わさり構成している、ローテーターカフ(回旋腱板)の一部です。後方から肩の関節の安定性を高める機能をしています。
棘下筋の作用や役割
●腕(肩関節)を伸展させ、外旋、水平外転させる
棘下筋は肩の後面を通過し、その起始部は停止部である大結節よりも内側にあります。この 棘下筋が収縮すると大結節が後方へ引っ張られるので、肩関節は外旋します。
また、大結節を後方へ 引っ張ることで、肩関節の伸展の補助もします。
棘下筋はよく障害を起こす筋肉の部位で、肩甲棘に沿った部分と、肩甲骨の内側へのトリガーポイントから関連痛が上腕外側に現れます。
棘下筋の機能的解剖
棘下筋は回旋筋腱板(ローテーターカフ)を構成する四つの筋肉のうちの一つです。
棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋は一体となり上腕骨骨頭関節下に固定します。それぞれの筋肉には腕の動作中での異なる肢位で、上腕骨頭を操作する役割があります。
特に棘下筋は小円筋と共に、上腕骨頭を関節窩の後方に密着させ、肩甲骨の烏口突起との挟み込みを予防している役割があります。
棘下筋は最も強力な肩甲上腕関節の外旋筋の一つで、投球の動作や頭上で打つなどの方の動きにおいて、上肢の後方への進展や外旋による前負荷には不可欠である筋肉です。
棘下筋は、これらの強力な動きの中でフォロースルーや減速の局面においても使われている。
力強い肩関節の外旋筋群(大胸筋、広背筋、大円筋、三角筋前部、肩甲下筋)と小さな外旋筋群(三角筋後部、棘下筋、小円筋)の間にしばしば不均衡が生じ、肩甲上関節に不完全な機能的構造を作り出してしまうことがあります。
棘下筋の位置と起始部停止部
棘下筋の位置
棘下筋は棘下窩に位置する、厚くて平坦な筋肉です。
棘下筋の起始部
肩甲骨の棘下窩
棘下筋の停止部
上腕骨の大結節
棘下筋のストレッチ方法
基本は肩関節を内旋させながら最大屈曲させることによって、棘下筋のストレッチになります。
今回は下記のようなストレッチ方法をご紹介します 。
・腕を抱えていく動きで肩関節後面を伸ばして行きますが、棘上筋をより意識していかないとなかなか伸びてる感じがしません。しっかりその部分がストレッチされてるかを調節しながらストレッチしていきましょう。
①:片腕を伸ばし、もう片方の腕で抱え込みます
立位で腕を伸ばし、もう片方の腕で抱え込みます。伸ばした腕のひじ付近を、下から肘の内側で抱え込みます。
②:伸ばした腕を指先の方向へ抱えた腕で引いて行きます
抱えられた腕を伸ばしたまま指先の方向へ抱えた腕で巻き込むように引っ張り肩の中部から後部をストレッチします。
硬い人向け:伸ばした腕の手首付近を抱えます
手首付近を抱える方法です。ストレッチする腕を深く引いていく動きには向かないものの、テコのレバーが長くなるため、硬い人が実施するにはこちらの方法がお勧めです。
バリエーション:体重をかけて棘下筋を強く伸ばします
伸ばした肩腕を床に密着させ、そこに体重をかけることで肩の中部から後部をストレッチする方法です。腕をまっすぐに伸ばし、付け根から折り曲げていくのがポイントです。
①:四つん這いで肩腕を床につけます
四つん這いの状態で片腕を伸ばし、腕の後面を床に密着させます。
②:体重をかけて腕を折り曲げます
①の状態から体重をかけながら、肩のラインを倒していきます。
POINT:伸ばした腕を指先の方向へ引きます
伸ばした腕は手前に引き寄せるのではなく、抱えた腕で巻き込むようにして、指先の方向へ引くのを意識してストレッチしましょう。
NGストレッチ:抱えた腕を手前に引き寄せる
抱えた腕を手前に引いても、肩の中部から後部は伸ばせません。抱えられた腕のひじが曲がるのも NG ストレッチです。
棘下筋の筋肉トレーニング・筋力強化は?
棘下筋のトレーニング方法は小円筋と同じですので、こちらをご参照ください
棘下筋の触診方法
肢位:患者さんは腹臥位で腕はベッドの下へ降ろしてもらいます
1・施術者は拇指で患者さんの肩甲骨の外側縁を触診します。
2・施術者は同じ手の指を内側上方の曲かけの上に置きます。
3・肩甲骨棘下窩に当たる筋腹を確認します。
4・そこから上方の外側へ、上腕後頭から大結節へと棘下筋腱をたどっていきます。
5・患者さんの肩関節の外旋に対して負荷をかけながら、適切な位置を確認して棘下筋を触診します。
棘下筋のマッサージやほぐし方
棘下筋は肩甲棘の下方を圧迫し調節することで、マッサージや整体ができます。
まずは、肩甲棘を確かめ、肩甲棘の下から棘の下縁に向けて圧迫します。
また、肩甲骨の後面(棘下窩)を90°の角度をつけて、親指で直接圧迫することもできます。
この筋肉は僧帽筋の深層になりますが、外側部分は表層にあります。棘下筋かにはトリガーポイントが多く出現するので、トリガーポイントを取り除くことも効果的です。
三角筋の深層で大結節にあるこの筋肉の停止腱を強擦するのも良い方法です。今回は下記の方法もご紹介します。
棘下筋のストリッピング①
・患者さんは腹臥位を取ります。施術者は患者さんの治療する側と反対側の肩側に立ちます。
・四指を重ね、指先を使い、拇指を肩甲棘の付け根のすぐ下、肩甲骨内側縁上の筋肉におきます。
・でも前回の開始位置のすぐ下に置き、同じプロセスを繰り返します。必要に応じて角度を変え、筋肉全体のストリッピングが完了するまで、肩甲骨に沿って下向きにマッサージを続けます。
棘下筋のストリッピング②
・患者さんには腹臥位をとってもらいます。施術者は患者さんの横側に、肩甲骨の方を向いて立ちます。
・拇指を肩甲骨の下角におきます。
・ 筋肉をしっかり押圧しながら拇指を肩甲骨の外縁の上方、肩峰の方へ滑らせます。
・上記の二つのプロセスは以上使っても行うことができるので、棘下筋が固すぎる患者さんに使うのもいいでしょう。
棘下筋の圧迫整体
・患者さんは腹臥位をとります。 施術者は患者さんの治療する方のそばに、肩の方を向いて立ちます。
・拇指を肩甲棘の付け根のすぐ下、筋肉の内側縁に起き、深く押圧します。
・拇指の位置を外側に移動させて同じプロセスを繰り返し、必要に応じて押圧し、押さえてリリースします。
・肩甲骨の内側縁に達したら、拇指の位置を肩甲骨外側縁に沿って、下向きに同じように移動させながら、肩甲骨の下角まで続けます。
棘下筋が硬くなると、弱くなると?
棘下筋が硬くなると(短縮)
手掌が正面を向くような姿勢になったり、肩関節を内旋させたりすることが困難になります。
棘下筋が弱くなると(伸長)
肩関節外旋の機能低下や、肩関節の動揺性が大きくなります。
棘下筋のその他の詳細
棘下筋の共働筋
肩関節の外旋:
・小円筋
・三角筋後部
肩関節の伸展:
・三角筋後部
・広背筋
・大円筋
・小円筋
・上腕三頭筋
・大胸筋(屈曲位からの伸展)
棘下筋の拮抗筋
肩関節の内旋:
・肩甲下筋
・三角筋前部
・大胸筋
・広背筋
・大円筋
肩関節の屈曲:
・大胸筋
・三角筋前部
・烏口腕筋
・上腕二頭筋
棘下筋の関連痛領域
肩甲骨の内側縁の上、三角筋中部もしくは後部領域場、腕の下方橈側の示指と中指の二本、または示指から薬指の三本まで
その他の検査対象筋
棘上筋の神経支配
神経支配:肩甲上神経 C5・C6
棘下筋の血管供給
血管供給:肩甲上動脈