テニス肘は、主に短橈側手根伸筋の起始部(外側上顆部)が肘の内側で障害されることによって起こります。野球肘は急性、慢性の肘関節痛の総称で、障害の部位によって外側型・内側型などに分類されます。外側型は前腕と上腕の関節面の軟骨に変性・壊死が生じ、内側型は内側上顆炎や内側側副靭帯損傷をきたしていることが多いです。
テニス肘の大きな特徴
40歳から50歳代の女性に多く、前腕伸筋腱の変性などで発症し、手首の背屈動作での疼痛が特徴的です。安静が望ましくシップをはったりていたり、ストレッチなどの保存療法が行われ、改善されない場合は手術が行われます。
野球肘(外側型・内側型野球肘)
野球肘は、投球動作を繰り返すことで生じる肘関節痛で外側型・内側型などがあります。外側型よりも、内側型の発症が多いとされています。
●外側型野球肘は、関節面の軟骨下骨の骨化障害から一部が離れ、進行すると関節内遊離体となります。投球後に肘の外側に疼痛を自覚し、進行すると日常生活でも疼痛を感じるようになります。
単純X線検査による病期に見合った治療法が選択されます。
●内側型野球肘は、上腕骨内側上顆を牽引する力が繰り返し働くことにより、内側側副靭帯損傷が生じ、肘内側痛が起こります。肘関節に外反ストレスを加えた単純X線撮影で診断されます。
テニス肘と野球肘の誘因や原因
●テニス肘の誘因や原因
テニスのバックハンドストロークを繰り返すなどオーバーユース(いわゆる使いすぎ)により上腕骨外側上顆に付着する伸筋腱の変性、断裂などにより発症するのが誘因、原因です。日常生活においては中年女性に多く見受けられます。
●野球肘の誘因や原因
・外側型(離断性骨軟骨炎)は肘外側の軟骨下骨に外反ストレスが加わり誘発されるのが誘因、原因です。
・内側型は肘を外反させる力が繰り返し加えられることで発症するのが誘因、原因です。
テニス肘と野球肘の症状、臨床所見
テニス肘の症状、臨床所見
動作時に肘外側部痛が生じます。
労働に伴う発症が多く、タオル絞りや掃き掃除の手首を背屈する動作で疼痛が現れます。
野球肘の症状、臨床所見
初期には症状はあまり発現しないが、軽徴です。
主な症状は投球時や投球後に現れる肘外側あるいは内側の疼痛で、投球を中止して安静にすることより軽減されます。重症になってしまうと、関節可動域が制限され、日常生活においても疼痛が発現します。
・外側型では剥離した骨・骨軟片がはまりこんで、関節が動かせなくなるロッキング症状が現れ、時間の経過により変形性関節症をきたすこともあります。
・内側型では肘の不安定感が現れることがあります。まれに、手の小指側にシビレが出現されることがあります。
テニス肘と野球肘の検査・診断・分類
テニス肘の検査・診断・分類
・チェアーテスト(chair test)、トムゼンの手技、あるいは中指伸展テストにより肘の内側疼痛誘発テストを行います。
・腱の変性や断裂の有無の確認にはMRI検査を行います。
野球肘の検査・診断・分類
・外側型では肘関節を45°屈曲させて正面像を撮影することで、透亮期・分離期・遊離期の特異的な像を確認します。
・内側型では肘関節に外反ストレスを加えて、X線撮影を行うことで、内側側副靭帯の障害を診断します。
・ともにMRIで正確な診断を行うこともできます。
外側上顆炎における疼痛誘発テスト
チェアーテスト:被験者に肘を進展したまま椅子を持ち上げさせると(前腕を回内位でテスト)外側上顆部に痛みが生じるテスト方法です。
トムゼンの手技:被検者の手関節を肘を伸展したまま握りこぶしを背屈させておき、検者が被検者の手関節を掌屈させようとすると、外側上顆に痛みを生じる。
中指伸展テスト:被検者に肘と中指を伸展させておき、検者がこれを掌側に圧迫すると、外側上顆に痛みが生じます。
X線正面像(肘関節45°屈曲位)
透亮期:上腕骨小頭部に透明巣(骨が薄く映る部分)を認める
分離期:骨片との間の透明帯が見られる
遊離期:遊離体が見られる
外側上顆炎と内側上顆炎の治療方法
テニス肘の治療方法
【テニス肘の保存的治療方法】
・運動を一時休止して、患部を安静に保ちます。
・ストレッチやスポーツ後のアイシング、湿布や塗り薬、テニス肘サポーター(テニス肘バンド)、スポーツ選手では理学療法なども用います。
・少量のステロイド薬の患部への局所注射では有効であるが、筋肉や腱を劣化させることがあるので、短期間には2~3回を超えないように治療します。
【テニス肘の手術療法】
・テニス肘が重症の場合には、筋膜の切開や筋腱の延長など、様々な手術療法が試みられています。
野球肘の治療方法
・初期には投球動作を禁止して局所を安静にして回復をはかります。
・外側型の分離期の後期や遊離期では遊離骨軟骨の骨片の摘出や遊離しはじめた骨軟骨片の再固定や骨軟骨移植などの手術を行います。
・内側型の重症例では靭帯再建手術などが試みられます
・早期に発見するためのメディカルチェックや原因となる投球肩を抑え、適切な投球フォームを指導するなどの予防が重要となりますので、常に注意してチェックしておきましょう。