まずは大腿筋膜張筋について大まかに解説していきます。
大腿筋膜張筋は他の股関節の屈曲によって、股関節が屈曲している時に股関節が外旋するのを防いでいます。また、股関節を同時に屈曲と内旋する時に作用します。
この作用はそれほど目立ってわかりませんが、歩行やランニング中に足がまっすぐ前に出るように導く重要な役割を果たします。したがって、背臥位でつま先を内側に向けて(股関節を内旋させて)足の挙上運動すると、この筋肉が大変よく使われます。
大腿筋膜張筋は、横向きに横たわって(側臥位)で股関節を外転させます(重力に逆らう)エクササイズで筋トレになります。このこの筋トレでは足を上げるときは素早く上げ、下ろすときはゆっくりと下すことにより、筋トレに更に効果があります。また、足首に重りをつけて負荷を増すのも筋トレの更なる効果を生みだします。
下記からは更に詳しく大腿筋膜張筋を解説していきます。
大腿筋膜張筋・腸脛靭帯はどんな筋肉
大腿筋膜張筋・腸脛靭帯は、腸骨稜から脛骨の外側にまたがる、大腿外側面の大腿筋膜の線維強化(肥厚)です。大腿筋膜張筋は腸脛靭帯へ付着し、深層膜を緊張させます。
この二つの筋肉は股関節の屈筋、外転筋及び、内旋筋として作用しています。大腿筋膜張筋と大臀筋は、腸脛靭帯の中に入りこれを制御する2つの筋肉です。
名前の由来
大腿筋膜張筋の「大腿筋膜」は大腿部にある全ての筋肉を包んでいる筋膜であることを意味しています。そして「張」はこの筋肉がピンと張られていることを意味しています。
英語の書き方
『Tensor Fasciae Latae』・Tensor:ラテン語の「締め貝」・Fasci:ラテン語の「束」・Lati:ラテン語の「広い」を意味しています。
位置はどこにあるの?
位置:大腿筋膜張筋・腸脛靭帯は股関節の前外側にあります。上前腸骨棘(asis)と腸脛靭帯の間で表層を走行し、大転子へ向かっています。
起始部・停止部はどこ?
起始部:上前腸骨棘(ASIS)、腸骨稜端の前面から起始しています。
停止部: 腸脛靭帯を介して脛骨外側顆に停止しています
大腿筋膜張筋と腸脛靭帯は共に機能
大腿筋膜張筋は前方の股関節部分に位置する小さな筋肉です。大腿部前面のV字を形成する筋肉のうち、縫工筋と共に存在する筋肉です。縫工筋と大腿筋膜張筋は股関節を屈曲させ、それぞれ反対方向への回旋を担う機能があります。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
また、大腿筋膜張筋は足部が地面に着地したまま、足を回旋させる時に強く作用しています。大腿筋膜張筋に関連して、下肢で大切な役割を果たす広く厚い腱があります。これは「腸脛靭帯」と呼ばれ、股関節と外側膝関節の重要なスタビライザーとなります。
大腿筋膜張筋(前方)と大臀筋(後方)が外側下方に走行し、腸脛靭帯となります。この太い腱は大腿外側を超えて腸骨外側顆の前面に停止しています。腸脛靭帯の遠位部の一部の線維は大腿骨外側顆と腸骨外側顆の分離を防ぐ外側側副靭帯を補助する働き、役割を持ちます。
大腿筋膜張筋、大臀筋、さらにこれらの筋肉に関連する腸脛靭帯の拘縮によって、近位部で大腿骨大転子、遠位部で大腿骨外側顆との摩擦が生じてしまいます。この過剰な摩擦は滑液包や腱や靭帯の障害を引き起こしてしまう可能性があります。
腸脛靭帯の柔軟性、股関節の内転筋と外転筋の筋力バランスを保つことは、この滑液包や腱や靭帯の障害を予防するのに役立つでしょう。
大腿筋膜張筋の機能的解剖
大腿筋膜張筋の起始部は停止部である脛骨の外側顆より内側・前面にあるため、大腿筋膜張筋は脛骨外側面を前方へ引くことで、股関節を内旋させます。また、起始部が停止部より上方・近位にあり、股関節の外側を走行しているため、股関節を外転する機能もあります。
加えて、脛骨の外側近位端が外側に引かれることによって、股関節の外転も生じます。さらに、大腿筋膜張筋は起始部が停止部より上方にあり、大腿筋膜張筋が股関節の前方(ないし外側)を走行して、脛骨を前方へ引くことで股関節を屈曲させます。
大腿筋膜張筋の収縮に伴って機能するのは脛骨ですが、同時に大腿骨も作用します。 大腿筋膜張筋は膝の外側面を走行する腸脛靭帯の緊張を保って、膝関節の安定性の維持を助けているのです。
大きな特徴とは?
大腿筋膜張筋は大腿筋膜、特に腸頸靭帯の緊張を保つのに役立っていて、これによって大腿筋膜で包まれている大腿部の主要な筋肉を大腿骨へ近づけることで、その機能の効率を高めています。
大腿筋膜張筋のストレッチ(4種類)
ストレッチはストレッチする側を壁側にして立ち、壁に手をついて身体を支えながら腰を壁側に突き出します。股関節の完全伸展、内転、そして外旋することで大腿筋膜張筋のストレッチができます。
今回は下記の様なストレッチ方法を紹介します。
①足を横に倒してのストレッチ方法
●このストレッチは、太ももの外側の大腿筋膜張筋が柔軟になり、膝の痛みなども軽減されます。ワイパーのように膝を曲げた足を横に倒すことで太ももを中心にストレッチされ、足の運びがスムーズになります。
歩行時のブレを防ぐ大腿筋膜張筋と、地面を踏み込む大腿四頭筋はこりり固まりやすく、膝関節などの問題を抱えがちなので、しっかりストレッチしておきましょう。長距離ランナーは、太もも横にある大腿筋膜張筋が必要以上に硬くなりやすいので、このストレッチをして予防しましょう。
1:仰向けになり片膝を立てもう片方の足を乗せます。手のひらは上に向けて全身をリラックスさせます。
2:立てた膝を横に倒して乗せた足で押さえつけます。上半身は床につけたまま足を横に倒します。
注意はここに意識!膝を抑えるほどに腰から太もも横が伸びるのを感じましょう
NG POINT:腰が浮いている⇒腰が完全に床から離れてしまうと、太ももへのストレッチ効果はうすれてしまいます。
OK POINT:腰が床についている⇒足を倒した時にできるだけ腰は床につけておくことで、大腿筋膜張筋のストレッチの効果が上がります。
②片足を後に曲げるストレッチ方法
●片足を後ろに曲げた状態で仰向けに体を寝かせる大腿筋膜張筋、腸脛靭帯のストレッチ方法です。
1:床に座ってから片脚を後ろに曲げます。足を伸ばした状態で床に座り、片足を後ろに折り曲げましょう。
2:徐々に上体を後ろに倒していきます。腕を曲げながら、ゆっくりと上体を後ろに倒していきましょう。
3:そのまま、上体を倒して、仰向けに体を寝かせます。さらに上体をゆっくり後ろに倒して、仰向けに体を寝かせます。反対側も同様に行いましょう。
③ソファーで行うストレッチ方法
●大腿筋膜張筋や腸脛靭帯を伸ばすと足が綺麗になります。しっかりストレッチして柔軟性を高め細い足を目指しましょう。
1: 右の大腿筋膜張筋のストレッチの方法から説明します。右足を折り、左足を立てて座ります。
2:そのまま上半身を後ろに倒して行きます。
3:ももの前側に心地よい引っ張られる感じが出たら、そのままの姿勢で筋肉がほぐれるのを待ちます。反対側も同様に行いましょう。
④座った状態でのストレッチ方法
●運動前の怪我の予防のほか、疲労回復にも効果的です。 太ももの大腿四頭筋や大腿筋膜張筋のストレッチは疲労などで筋肉が硬くなりやすい膝の周囲や太ももを柔軟にします 。
太ももの筋肉は一番強力な筋肉で、日常よく使う筋肉なので疲労が溜まりやすいです。しっかりストレッチし、怪我や疲労の予防や改善をしましょう。
1:曲げて座ります。左側の大腿筋膜張筋のストレッチ方法です。
2:右手は身体を支えながら、左手で足首を持ち伸ばします。
3:腰が反らないように注意し、骨盤と腰を一緒に左後方に傾けていきます。無理に体を後ろに倒さずに、太ももの前側に心地よい引っ張られた感じが出たら、そのままの姿勢でゆっくりと呼吸をしながら、筋肉がほぐれるのを待ちます。
大腿筋膜張筋の筋トレ(2種類)
●大腿外側の大腿筋膜張筋だけでなく、大臀筋、中臀筋、小臀筋などの股関節を外転させる筋肉を鍛える筋トレ方法です。 ピンポイントで筋トレせずに、大腿四頭筋、お尻の筋肉(大臀筋、中臀筋、小臀筋)も一緒に鍛えましょう。
大腿筋膜張筋は太ももをまっすぐ上げる際に働き、股関節が外旋するのを防ぎます。走行時など、片足になった時のフォームが安定します。
側面の筋トレ方法①
1:上半身になり下の手で頭を支え上の手は腰に当てます。その時に 体が前後に傾かないように注意しましょう。
2:上の足をまっすぐ上げ下げします。 体のブレは最小限に抑えましょう。
NG POINT:上の膝や下の膝が曲がっている。上げ下げする足の膝が曲がると足への重さが動作の視点である関節に近くなり大腿筋膜張筋へのトレーニングの負荷が軽くなってしまいます。
大腿全体の筋トレ方法②
●下半身に総合的に効くスクワット!… 大腿筋膜張筋や大腿四頭筋、骨盤周りの臀筋群(大臀筋、中殿筋、小殿筋)などの下半身全体をまんべんなく鍛えることができる筋トレのトレーニング方法です。
股関節と膝のバランスに気をつけて正しい動きを繰り返しましょう。
1:足を肩幅に開いて立ち、両手は胸の前で組みます。
2:背中をまっすぐに保ったまま、太ももの裏側が床と平行になるくらいまで沈み込んだ後、1の姿勢に戻します。
NG POINT:
①上体を前傾させすぎず、重心を真下に落とすことを意識する。
②上体を立てすぎて、膝がつま先より前に出てしまわないように意識しましょう。また、膝が内側に入ってしまうのもNGポイントです。
③背中は丸めずに真っ直ぐキープしたまま体を沈めていくこと。
大腿筋膜張筋の触診方法を解説
大腿筋膜張筋と腸脛靭帯の触診方法は、まず、上前腸骨棘(asis)を見つけ、上前腸骨棘 (asis)のすぐ上後ろにある腸骨稜から大転子へ向かって大腿筋膜張筋をなぞっていくことで触診もマッサージもすることができます。
今回は下記の様な縫工筋の触診方法を紹介します。
肢位:患者さんに仰向けになってもらいます。(股関節は内旋、膝関節は屈曲位になってもらいます)
1:患者さんの横に大腿部に面して立ち、指先で上前腸骨棘( ASIS)を 確認します。
2:指先を大腿の外側に向かって、下外側方向に滑らせます。
3:腸脛靭帯にたどり着くと、平らで硬い筋肉の感触を得られる大腿筋膜張筋を触診することができます。
4:大腿筋膜張筋の場所を確実に把握するために、大腿筋膜張筋に負荷を加えながら、患者さんに股関節の外転をしてもらうと、大腿筋膜張筋を確認できます。
腸脛靭帯の触診方法を解説
肢位:患者さんに仰向けになってもらいます。(股関節と膝関節は軽度の屈曲位になってもらいます)
1:患者さんの横に大腿部に面して立ち、一方の手で大腿骨外側顆を確認します。
2:手を大腿骨の大転子に向かって、遠位に滑らせます。
3:大腿の外側部に沿って腸脛靭帯を触診します。
4:腸脛靭帯の場所を確実に把握するため、腸脛靭帯に負荷を加えながら患者さんに股関節の外転をしてもらいます。
ほぐし方を紹介
大腿筋膜張筋、腸脛靭帯をほぐす効果的なマッサージ方法は、強擦法が一番効果的です。大腿筋膜張筋は注意深い触診とマッサージ方法によって、大腿筋膜張筋と腸脛靭帯が紡錘型をしていることに気づくでしょう。
今回は下記の様な大腿筋膜張筋のほぐし方、マッサージ方法の2種類と、腸脛靭帯のほぐし方マッサージ方法2種類を紹介します。
ほぐし方①を紹介
【大腿筋膜張筋の圧迫方法】
1:患者さんには仰向けになってもらいます。
2:施術者は患者さんの脚の膝の位置に立ちます。
3:四指を大腿筋膜張筋の上、大転子と腸骨稜の上に置きます。
4: しっかりと組織を押圧し、痛みの部位を探します。そのトリガーポイントを指圧や強擦でしっかり押さえ、トリガーポイントをリリースします。
ほぐし方②を紹介
1:患者さんには仰向けになってもらいます。
2:施術者は患者さんの横の胸の位置に立ちます。
3:手根、拇指、または四指を大腿筋膜張筋の上、腸骨稜の上に置きます。
4: しっかりと組織を押圧し、大転子を超えて筋肉に沿って指を滑らせます。
▶次に説明する腸脛靭帯のマッサージテクニックを用いて大腿筋膜張筋から腸脛靭帯に対してのマッサージを続けます。
腸脛靭帯のほぐし方①を紹介
1:患者さんには仰向けになってもらいます。
2:施術者は患者さんの横の腰の位置に立ちます。
3:手根、拇指、または四指を腸脛靭帯の上、大転子のすぐ下に置きます。
4:しっかりと組織を押圧し、脛骨の外側顆まで筋肉にそって滑らせます。
腸脛靭帯のほぐし方②を紹介
1:患者さんには横向きになってもらいます。患者さんの下の足を伸ばし、上の足の股関節と膝関節を曲げてもらいます。
2:施術者は患者さんの背後、骨盤の位置に立ちます。
3:手根、拇指、または四指を腸脛靭帯の上、大転子のすぐ下に置きます。
4:しっかりと押圧し、脛骨の外側顆まで筋肉に沿って滑らせます。
大腿筋膜張筋・腸脛靭帯のその他の詳細
硬くなる、弱くでなる症状
・硬くなる(短縮):短縮した大腿筋膜張筋によって骨盤が前傾したり、つま先が内側へ向く股関節の内旋が引き起こされたりします。
また、足の幅が横に広がるような兆候は股関節を外転させる大腿筋膜張筋の短縮の現れだといえます。
・弱くなる(伸長):大腿筋膜張筋の伸長によって、機能が低下したり姿勢に影響を与えたりすることはありませんが、膝の不安定性を生み、膝関節の痛みが出る可能性があります。
共働筋
拮抗筋
◆股関節の伸展のとき:
・大臀筋
・半腱様筋
・半膜様筋
・大腿二頭筋
◆股関節の外旋のとき:
・大臀筋
・梨状筋
・上双子筋
・下双子筋
・内閉鎖筋
・外閉鎖筋
・大腿方形筋
・腸骨筋
・縫工筋
◆股関節の内転:
・大内転筋
神経支配
・神経:・上殿神経ーL4-S1
血管供給
・血管:・上殿動脈
関連痛領域
・大臀外側
その他の検査対象筋
・外側広筋