出産して体型が崩れたり体重が戻らなくて悩んでいるママさんは非常に多いと思います。
今回は産後に体型が崩れてしまったり、体重が落ちない原因の骨盤と骨格の変化を紹介していきます。
妊娠すると変化が体に起きる
産後は体が崩れるもの、体重が増えてしまうもの…。これは事実です。なぜなら、産後という非常にドラマティックな出来事を体験するには、それだけ体も事前に準備をしていかなければならないからです。それも、赤ちゃんをお腹の中に宿してる最中のことです。
体は急激な変化を起こすことはできませんから、出産準備のために、じっくりと体を作り変えていきます。基本的に人の体というのは、重力に打ち勝ちながら移動するために進化してきましたが、妊娠したら体重を宿すため安定した状態にならなければいけません。
妊娠に伴う変化はあくまで出産のためのものですから、妊娠していない通常の生活から考えると不都合が生じます。例えば歩き方も変わります。足の裏で地面を踏みしめるようになりますから、足首から太ももにかけて太くなります。
また、妊娠中は股関節の運動が小さくなることも関係していて、腰回りにお肉がついてしまうなどといった見た目の変化が起こります。それに伴い筋肉の使い方や関節の使い方も変わりますので、それが体に負担をかけることにつながり、腰や背中に痛みを感じる など、健康上の悪影響も及ぼしてしまいます。
体は変化を元に戻そうとする
人の体というのは、急激な変化に対しては元に戻ろうという性質があります。反対に ゆっくりと変化したものに対してはなかなか元に戻ろうとしてくれません。つまり、産後に何もしなければ、体験の崩れがそのまま定着してしまうことになります。
これが産後に体型が崩れてしまう原因になります。それでは、体内にはどういった変化が起こるのでしょうか?人の体は原則骨格と筋肉と体液(血液やリンパ)で作られています。それらがどう変わっていくかについても少し話していきます。
骨盤は内臓を保護する働き
本来、骨盤というのは妊娠や出産のためには作られていません。人間の進化の過程を見ていくと明らかですが、骨盤は運動と保護の作用が主で、妊娠や出産は従の作用といってもいいでしょう。本来の作用ではないのですから、妊娠から出産っていうのは、骨盤に大きな負担を与えることになります。
骨盤に囲まれている空間というのは、腸や子宮、卵巣、膀胱などを収納するだけでいっぱいいっぱいの状態なのです。そんなお腹の中に赤ちゃんが入ってることを想像してもらいたいのです。骨盤は体を支える要となっています。ですから、そう簡単に大きく動くようにはできないのですね。
妊娠すると骨盤がゆっくり開く
十月十日という期間をかけて、ゆっくりと骨盤を内側から押し広げていくから、骨盤は赤ちゃんを産むためのスペースを確保することができるのです。ところが、それだけでは出産するための産道は確保できません。なぜなら、出産までは流産しないよう、赤ちゃんのためにギリギリの支えが必要になるからで、出産の時にその支えを一気に取り除くようにできています。
そして、出産時に恥骨や仙腸関節といった骨盤の関節を一気に 緩めます。仙腸関節の一つ、仙骨は後ろにせり出してくるような感じになり、恥骨は数ミリ離れていきます。そして座った時に当たる坐骨部分が左右に大きく広がることで、赤ちゃんの通り道【産道】を確保するのです。
この時の骨盤には、普通に生活してる時には起こりえないほどの劇的な変化が起こります。考え方を変えると、こういった変化が起きている時期だからこそ、体を変えやすいといえます。
妊娠すると子宮も大きくなる
鶏の卵(鶏卵)を手に取ってじっくりと眺めてみてください。妊娠前、赤ちゃんが収まる子宮は、ニワトリの卵ぐらいの大きさしかありません。こんな小さな子宮が妊娠して出産に向かうときに、どういった変化をするのでしょうか?
出産前になるとニワトリの卵ほどの大きさだった子宮は、直径約40cmほどまでに大きくなります。重さは 実に約20倍です。子宮の空間はなんと約2300倍にもなります。もちろん、ただ大きくなるだけではありません。その大きくなった子宮の中には赤ちゃんと胎盤、そして羊水などが入っており、それらを全部合わせると、5キロ近いものがお腹の中に収まっていることになります。
ボーリングのボールは直径が20cmを超えるほどですから、どれだけ大きなものがお腹の中に収まっているか想像できると思います。
妊娠で重心が下がり安定型に
5キロほどの大きくて重たい赤ちゃんを、下腹部に収めなければいけないのですから、体の重心は下がり、そして前側に移動します。体重は重心の位置によって変化するのですが、重心から下がるとお相撲さんのような安定型の体型になり、それが妊婦体型を作る原因となるのです。
出産をすると子宮は急速に元の大きさに戻っていき、1ヶ月もしないうちに妊娠前の大きさになるのですが、変わってしまった重心の位置だけは、自然に戻ることはありません。出産後の体型は元に戻りにくいといわれてきましたが、実はこの中心の位置は体型を元に戻しにくくする原因となっていたのです。
ですから重心を高いところに移動させることで、体型は改善することができるようになります。
妊娠での上半身の骨格の変化
骨格の変化は骨盤周りだけなく、上半身にも及びます。その原因は大きくなる子宮です。ニワトリの卵ほどの子宮が直径40cmほど大きくなるにつれて、横隔膜という肺のすぐ下にある膜上の筋肉を下から押し上げていきます。押し上げる高さはおよそ4cmです。
これだけ横隔膜が押し上げられると、体に変化が生じてしまいます。変化の一つ目は、一度に食べられる食事の量が減ること。その結果、食事の回数を増やし、こまめに食べるようになる人も少なくありません。このこまめに食べる習慣が産後に太る原因の一つにもなります。
また、横隔膜が押し上げられると、呼吸が少しずつ浅くなります。呼吸の浅さは体の疲れやすさを生じさせますし、代謝の低下を引き起こす原因にもなります。妊娠中や産後にあまり食べてなくても、太りやすくなるのはこれが原因の一つと考えられています。
胸郭でアンダーバストが大きく
横隔膜が押し上げられると胸郭が広がります。胸郭というのは背骨と肋骨、胸の前にある胸骨によって囲まれた籠状の骨格のことです。
下腹部を引っ込めるとその胸郭が広がりますが、これは横隔膜を押し上げるから起こるのです。これと同じことが妊娠中期から後期にも起こっているのです。バストのサイズで見ると、特にアンダー部分がワンサイズ大きくなります。
これが産後体型特有のずんぐりとした形状の原因となります。これらの変化の中で最も問題になるのがアンダー部分のワンサイズ大きくなることです。
慢性閉塞肺疾患の予防に
慢性閉塞肺疾患(COPD)という息が吸いにくくなる病気があります。慢性閉塞肺疾患の主な原因は喫煙で息を吸いにくくなることで、どんどん胸郭が広がるという特徴があると言われています。
ところが、女性の中にはタバコを吸わなくても、この慢性閉塞肺疾患に苦しむ人が少なくないのです。それは妊娠中から出産の際に、肺に問題がなくても胸郭が広がってしまうことがその原因の一つになっているからです。
妊婦体型は見た目の問題だけでなく、中高年になったとき、慢性閉塞性肺疾患という病気の原因の一つにもなります。予防という観点からも産後の骨盤ケアで重心を高くすることが必要になるのです。