例えば、熱いフライパンに手が付くと、その情報が脳に達して初めて「熱い!」と感じます。その神経伝達はどういう流れで伝わり、どう手が動くのか?解説していきます。
痛みの伝達は末梢神経から脊髄、脳中枢へ伝達
床に落ちているが画びょうで一瞬、あとになってから「痛ッ!」と叫んだ経験があると思います。
画びょうの針が刺さった瞬間、足の裏に密集している感覚受容器というセンサーがオンになり、末梢神経という電線を伝わって、その情報を脊髄に伝えます。
脊髄は何かよからぬ異常が起こったと察知し、途端にをひっこめる指令が出されます。これが「反射】と言われるものです。
しかし、実際はこの段階では、まだ痛いとは感じていません。情報は、脊髄をさらに上に登り、脳まで行き、痛みを感じる中枢に到達します。
中枢とは、脳や脊髄の中にある島状の神経細胞の集まりの事を言いますが、その中枢に達した瞬間、初めて痛いと感じるのです。
言い換えれば足の裏で異常を察知して、脳で痛みを感じるのです。この間、コンマ何秒の出来事です。
とにかく、痛みは身体に起こった異常を教えてくれる警告であることは間違いないでしょう。
生まれつき痛みを感じない「先天性無痛症」という人がいますが、こういった人たちは十分注意をしていても、いつのまにか知らないうちに怪我をしていて、それが化膿して命を縮めることが多いのです。
幸い、私たちは痛みを感じるからこそ、大事に至らないと言っても言い過ぎではありません。
痛みの持続は「発痛物質」が生じると、痛みの情報を送り続けます
画びょうの針に話を戻すと、針が刺さったところは、数分はズキズキ痛むでしょうが、それも自然に消えてしまいます。感覚受容器というセンサーが自動的にオフになるのです。
ところが万が一、針穴からばい菌が入って化膿でもうしたら、こうは行きません。そこに炎症が起こり、当分の間はズキズキと疼きます。たとえ、ばい菌が入らなくても、何か炎症が起こると、発痛物質というものが生まれて、感覚受容器というセンサーのスイッチを入れぱなしにします。
そして絶えず、中枢に向けて信号を送り続けるのです。これが持続的な痛みを感じる仕組みです。この時、炎症が起こっている部分を冷やすと、痛みが楽になることは皆さんも経験済みですね。これは冷やすことで毛細血管が収縮して充血が抑えられ、発痛物質が少なくなるからなのです。
痛みと気分の関係とは?
痛みの中枢は、愉快な感情、ゆうつな気分、不安な気持ちなどの中枢とも情報を交換しています。
ホームランを打った選手が仲間から、バシバシと手荒い祝福を受けている光景を見かけますが、たたかれている本人はホームランを打ったという高揚感から、実際にはあまり痛いいとは思っていないでしょう。
同じたたかれるにしても、これが三振やダブルプレーを食らったためにたたかれているとしたら、本人はさぞかし痛いと感じるはずです。
このように、痛みを痛みとして認識する段階で、様々な気分や感情に影響を受けているのは、紛れもない事実なのです。
痛みの錯覚とは?同じ温度の水でも冷たくも温かくも感じます
神経のシステムがこれだけ複雑だと、時には錯覚すら起こします。家でも簡単にできる科学の実験があるので一度試してみてください。
まず三つの洗面器を用意します。左の洗面器には40°ぐらいのお湯を、真ん中には普通の水を、右には冷たい氷水を、それぞれ入れます。次に左手を 左のお湯の洗面器に、右手を右の氷水に、それぞれいれます。
20秒ぐらいしたら、今度は両手を真ん中の洗面器に入れてみましょう。 どうでしょうか?右手は「冷たい」、左手は「あったかい」と感じるはずです。
人が思っている感覚というのが、絶対的ではないという証拠ですね!