今回は「胸鎖乳突筋」について説明していきます。
胸鎖乳突筋の機能や作用(位置・起始部・停止部)、筋トレ方法やストレッチ方法を解説します。
その他、胸鎖乳突筋の触診方法、ほぐし方やマッサージ方法も解説していきます。
胸鎖乳突筋はどんな筋肉?その概要
胸鎖乳突筋の主な動きは、頚椎(首)の屈曲と回旋で。首を左に回旋(頭を左側に回す)させれば、右側の胸鎖乳突筋が簡単に触診できます。
胸鎖乳突筋を鍛える筋トレ方法は、板状筋の反対で、手をこの額の前で組んで後方へ力を加えます。
次にこの力に抵抗しながら、首を前方へ曲げます。
また、手を顎の左右のどちらかに置いて抵抗を加え、抵抗に逆らって首を回すことでもこの筋肉を鍛えることもできます。
頚椎を過伸展することで、胸鎖乳突筋の両側を少しだけストレッチできます。特に右側をストレッチするには、左側へ側屈したまま右に回旋して伸展させます。
逆の動きで左側をストレッチできます。
名前の由来
胸鎖乳突筋は筋肉の付着部から命名されています。
「胸」は胸骨、「鎖」は鎖骨、そして「乳突」は側頭骨の乳様突起をそれぞれ示しています。
英語の書き方
『Sternocleidomastoid』
・stemon:ギリシャ語の「胸」(chest)
・kieis:ギリシャ語の「鎖骨」
・mastos:ギリシャ語の「胸」(breast)
・eidos:ギリシャ語の「類似」を意味しています
位置と起始部・停止部は?
胸鎖乳突筋の位置
胸鎖乳突筋は頚部の前外側の表層にあります。
起始部はかなり前方にあり、そこから筋線維は頚部の外側を走行して上方に停止します。
胸鎖乳突筋の起始部
胸鎖乳突筋の起始部は胸骨柄・鎖骨付近部
胸鎖乳突筋の停止部
胸鎖乳突筋の停止部は側頭骨の乳様突起
胸鎖乳突筋の作用とは?
胸鎖乳突筋が両方とも作用すると
・頭と首を安定させます
・首の過伸展と、頭の後方への動き(むち打ち損傷)を阻止する作用
・首を屈曲させます
・嚥下や呼吸にも関係します
胸鎖乳突筋が片方だけ作用すると
・反対側に顔を回旋させます
・顔を上に向ける作用があります
・僧帽筋とともに、頭や首を横に向かせます
胸鎖乳突筋の役割や機能の詳細
胸鎖乳突筋の作用として…
・両側の収縮時は頚部の屈曲の作用です。
・片側のみの収縮時は頚部の側屈と反対側への回旋の作用です。
胸鎖乳突筋は頚部で最も大きく最も浅層にある筋肉です。
ヴィジュアル機能解剖学 南江堂
二つの頭があり、乳様突起から鎖骨柄と鎖骨中央部につながっています。
胸鎖乳突筋は下顎枝に並んで走行し、頭板状筋と逆 V 字型を形成しています。
この二つの筋肉は協力して、肩甲骨帯上での頭の前後位置を中央に位置させます。
側頭骨の乳様突起に強く付着し、頚部に対して斜め方向に位置しているため、胸鎖乳突筋は頚部の屈曲、側屈、回旋の強力な主動筋となっています。
さらに頭蓋の後部に付着しているため、頭部と上位頸椎を伸展させることができます。
頚部の屈曲と頭部の伸展の組み合わせでは、下顎を導いて頭部の前進を作用させます。
こ胸鎖乳突筋の両側に拘縮が生じた場合は、頚部前進姿勢、片側のみに生じた場合は、斜側(側屈回旋が生じた頚部)と呼ばれる状態のことが起きることがあります。
独自の大きな特徴とは?
胸鎖乳突筋は、頭部が急に強く後方へと引かれる動きに抵抗する筋肉ですので、むち打ち症になった時によく痛める筋肉です。
このように、頭部への強大な力が加わる動きは、乗車中に後方から追突された時によく起こります。
むち打ち症は、主に胸鎖乳突筋の損傷によって起こります。
胸鎖乳突筋のストレッチ方法(2種類)
胸鎖乳突筋は、首を左右に回す時に働きます。
首の左右の部分にあって、軽くつまむことのできる筋肉です。
胸骨や鎖骨付近から側頭部への付着しているため、首元(胸鎖乳突筋の付け根)を押さえながら、頭を後ろや斜め後ろ方向に倒していくと効果的に伸ばすことができます。
首周辺の筋肉には、僧帽筋や胸鎖乳突筋以外の細くて細かな筋肉があるので、勢いをつけたり強く伸ばしたりしないように注意しましょう。
A:胸鎖乳突筋のストレッチ
ステップ1:上半身をまっすぐにした姿勢で片手を頭の上に乗せます
ステップ2:腕で頭を真横に傾けます。この時顔は正面を向いたままを意識しましょう
B:首の前(胸鎖乳突筋)のストレッチ
後ろに倒れないよう背もたれのついた椅子を使用します。
ステップ1:下半身を固定したまま、両手を首の付け根に置きます
ステップ2:そのまま後ろに倒しながら、首の前面を伸ばしていきます
両手で胸鎖乳突筋の下部を固定して、頭を後ろに倒してことで、じっくり伸ばします。
また、上半身の姿勢を意識していきましょう。
首は上半身と頭部をつなぐ部位です。したがって背中を丸めてしまっては、しっかり伸ばすことができません。
首の前後・左右の筋肉を伸ばす時は、上半身をまっすぐ伸ばしたまま行い、「伸びをよく実感」しましょう。
あまり時間にはこだわらずに、「じっくり、ゆっくり」伸ばしていくと良いでしょう。
あくまでも、自分のペースで行うことが大事で、継続してストレッチ整体を試みることができるでしょう。
胸鎖乳突筋の筋トレ方法(2種類)
ここでは胸鎖乳突筋の筋トレ方法を紹介します。
しかし、首の筋肉はとても繊細ですので、無理せずに自分の筋力にあったレベルで、自分が出来る回数で筋トレしましょう。
A:胸鎖乳突筋を鍛えるネックフレクション
仰向けで胸鎖乳突筋を鍛えます。台やベッドなどに仰向けになって、胸鎖乳突筋を鍛えるネックフレクションを紹介します。
ポイントは首を下に動かすことです。あごを引きながら頭を上げると、首を支点に正しく動作ができ効果的に筋トレできます。
1:台の上に仰向けに寝て、台やベッドの端から頭を出して下げます。後頭部にはタオルなど柔らかいものを当てておいてもいいでしょう。
2: 胸を張ったままあごを引いて頭を上げた後、ゆっくりと下げて①の姿勢に戻します。
ポイントとしては体幹の代償(痛める事)を起こさないように注意しましょう。
体幹を固定して首から頭を動かすことが大切です。
B:胸鎖乳突筋を鍛えるサイドネックフレクション
横向きの姿勢で首を鍛える筋トレ方法です。台やベッドなどに横向きになって首を鍛えるネックフレクション…。
体の他の部位を使わずに、首だけを動かすのが基本ですが、それで負荷が足りないと感じる時は、自分の手で負荷をかけると強度が上がります。
1:台やベットの上に横向きに寝て、台やベッドから端から頭を出して下げます。
2:肩を台につけたまま首を上げた後、ゆっくり下げて①の姿勢に戻します。
ポイントとしては上側の側頭部を手で下に押しながら行えば、効果的な胸鎖乳突筋を鍛える筋トレになるでしょう。
胸鎖乳突筋の触診方法
患者さんに仰向けになってもらいます。頭を持ち上げ、頭を回旋させると浮き出るのが胸鎖乳突筋です。
乳様突起から胸骨頭にかけて触診が可能です。鎖骨頭は胸骨頭ほど、はっきり触診できませんが、乳様突起から鎖骨後方の付着部にかけて触診が可能です。
今回は下記のような胸鎖乳突筋の触診方法を解説していきます。
肢位:患者さんには仰臥位をとってもらいます。
1:患者さんの横に座り、胸鎖乳突筋の組織を緩ませるために、頭をわずかに反対側に回旋させます。
2:拇指で乳様突起を見つけて、胸鎖乳突筋に向けて前方尾側方向に指を動かします。
3:胸鎖乳突筋の筋腹を優しくつまみ、胸骨に向かって沿うように触診し、内側胸骨とうと外側鎖骨頭を判別します。
4:適切な位置を確認するため、患者さんが頸部屈曲するとき負荷をくわえて胸鎖乳突筋を触診します。
胸鎖乳突筋のほぐし方
胸鎖乳突筋は最も表層にある筋肉なので、頚部の前外側で簡単に触診でき、マッサージやほぐしで筋肉を和らげることができます。
この胸鎖乳突筋を等尺性に収縮させるために、前頭部に手を押し当てて抵抗をかけると、胸骨柄から側頭骨の乳様突起にかけて、この胸鎖乳突筋を見つけることができます。
四指と拇指を使って、この胸鎖乳突筋をつまみ、圧迫法、強擦法、揉捏法などが有効的です。この胸鎖乳突筋の筋肉へのマッサージは、側頭部の頭痛を和らげるマッサージに大変役立ちます。
今回は下記のような内肋間筋のマッサージ方法、ほぐし方を紹介します。
胸鎖乳突筋のほぐし方(2種類)
◆胸鎖乳突筋のほぐし方①
1:患者さんには仰向けになってもらいます。
施術者は患者さんの頭を片手で保持し、治療する胸鎖乳突筋とは反対方向へ頭を回旋させます。
2:もう片方の手の拇指または、四指の指先を胸鎖乳突筋の起始部、乳様突起に置きます。
3:しっかりと組織を持ちながら、拇指または他の指の指先を胸骨頭、そして胸骨柄の付着部へと下行させます。
圧痛点を探りだしたら、リリース(ほぐれた感じ)したと感じられるまでそこで動きを止め、持続圧を行います。
4:停止部に戻り、同じプロセスを鎖骨頭に対しても行こない、指を鎖骨付着部まで下行させます。
5:反対側も同様に行います。
◆胸鎖乳突筋のほぐし方②
1:患者さんには仰向けになってもらいます。施術者は患者さんの頭を片手で保持します。後頭部と辛い体をしっかり支えます。
2:頭を数センチ持ち上げ、胸鎖乳突筋が浮き出るようにします。治療する胸鎖乳突筋は反対側へ頭を少し回旋させます。
3:乳様突起の付着部にできるだけ近い位置から始めます。もう一方の手の母指と示指の側面、または母指と示指と中指の先端部とで胸骨頭をつかみます。
4: 強く、ただしやさきしく圧迫しながら、患者さんに圧痛や関連痛を感じないか尋ねながら、患者さんの反応に十分注意を払って行います。硬結あるいは圧痛がある場合は、押したままリリース(ほぐれた感じ)したと感じるまで、持続圧をして待ちます。
5:のり君を少し下げて始め胸骨柄のできるだけ近くまで同様にリリースを行います。
6: 治療する側とは反対側へ頭をさらに回旋させます。 鎖骨頭に対しても上記プログラムを繰り返します。鎖骨頭は胸骨頭より深いところにあるので、鎖骨頭は挟みにくいことを頭に入れておきましょう。
7:全プロセスを、反対側も同様に行います。
胸鎖乳突筋のその他の詳細
硬くなる、弱くなるでの症状
・硬くなると(短縮):
胸鎖乳突筋の片方のみが短縮した場合には、主に頚部が反対側へ回旋した姿勢を示します。また、機能としては、頚部の反対側の側屈が低下します。
胸鎖乳突筋が両側が短縮した場合には、頸部を完全に伸展することが制限されます。さらに、胸鎖乳突筋の短縮によって、頭痛を目の奥に感じることがあるかもしれません。
・弱くなると(伸長):
胸鎖乳突筋の機能が低下します。
胸鎖乳突筋の共働筋
▶斜角筋
胸鎖乳突筋の拮抗筋
胸鎖乳突筋の神経支配
・副神経
胸鎖乳突筋の血管供給
・後頭動脈
・後耳介動脈
胸鎖乳突筋の関連痛領域
・胸骨頭:後頭部、目の上の弓、頭頂、頬、顎および顎の下
胸鎖乳突筋のその他の検査対象筋
・頚部の全筋肉(前面、側面、後面)