こわばった肩甲骨が起こす弊害は肩こり、首の痛みはもちろん、頭痛や冷え、便秘、メンタル不調もあります。原因の根源は「悪い姿勢」がかなり影響しています。
しかし、猫背を意識するために仕事中の座り方や、正しい姿勢は意外と大変です。頭の重さはあなたの肩や、首、背中にストレスを与え続け、肩甲骨周りの筋肉を固くしてしまいます。
その事により肩甲骨の動きを悪くし、更なるコリや痛みの悪循環を引き起こします。今回は、肩甲骨の動きが悪いことにより引き起こす症状を紹介していきます。
こわばった肩甲骨は頭痛や冷え、便秘、メンタル不調にも
悪化した肩こりは、血流低下のほかにさまざまな弊害をもたらします。慢性化、重症化によって「頭痛」や「めまい」が起こるのは、慢性的に肩甲骨の動きが悪い典型的な症状です。
また、肩こりからくる眼精疲労によって、目の疲れやかすみ目が引き起こされることもあります。そうなると、よく見えない→首を前に突き出す→ますます首がこる→さらに目が疲れる、という悪循環に陥りがちです。
肩甲骨周りの血流が悪くなることで、冷えも感じやすくなります。寒さで体をこわばらせる→ますます凝る…これがまた悪循環になります。こうした不調は、身体の他の部分にも影響を及ぼします。
身体は自律神経によってコントロールされています。緊張状態の時は交感神経が活躍し、リラックス状態の時は交感神経が優位になり、双方が交互に働くことで、体の諸機能がスムーズに運営されているのですが、体がいつも緊張していると、交感神経の出番がありません。
すると内臓の調子が悪化し、便秘や下痢を起こしやすくなります。胃腸ははリラックスした状態でないと、活発に活動できないからです。緊張状態が続くと、睡眠の質も落ちます。その結果、慢性的な疲労感やストレス耐性の低下がおこり、メンタル状態も悪くなるでしょう。
では、これらの連鎖を止めるためには何が必要でしょうか?その答えは直接的には「ストレッチで肩甲骨の可動域を広げること」です。
しかし、その効果を存分に引き出すには、さらに必要なことがあります。肩甲骨をゆがませる原因である「猫背」を引き起こしているのは、そもそも何なのでしょうか?
次は、その「大元の原因」を探ってみましょう。
猫背の二足歩行が肩甲骨の動きを悪くする
まず、簡単なテストをしましょう。まっすぐ背筋を伸ばして立ち、両腕を真横に回旋させながらバンザイをしてみてください。
次に、背中を丸めて首を前に突き出した「猫背」で同じことをしてみましょう。いかがでしょうか?2回目のときは両腕をしっかりあげられなかったのではないでしょうか?「バンザイ」の動きは180度の動きのうち、120度が「肩関節」です。
そして、残りの60度が、肩甲骨の「上方回旋」によって可能になります。猫背のとき、肩甲骨は外転しています。その状態では、上方回旋の動きが阻害されているのです。つまり単純に言えば、「猫背だと肩甲骨は動かない」のです。
では、そもそも、なぜ人は猫背になるのでしょうか?とことん、さかのぼるると、それは人が道具を使う生物だからだとと言えます。人類は進化の過程で、「二足歩行」をする動物となりました。
動物にとっての前足は「腕や手」として、道具を操作する役割を果たすようになりました。その後、道具は時代とともに発達しました。現代人は、様々な道具を使って日々の生活を便利に送っています。車などの移動手段を使いこなし、パソコンやスマートフォンで、情報収集や発信も簡単に行い、結果として「前かがみの姿勢」をとることが非常に増えました。
そして、運動の機会も大幅に減ってしまいました。悪い姿勢+運動不足…これは肩周りの筋肉が固まるのも当然です。さらに言えば、猫背は「背中と肩」だけの問題ではありません。次は「立ち姿」全体に潜む問題について考えてみましょう。
腹筋がないと正しい姿勢は大変です
腹筋が使えていないと、肩も腰も悪くなります。「壁に背をつけて立つ」ということは、「肩甲骨全体をきちんと壁につける」ということです。これがなかなか皆さんにはできません。
「肩甲骨の内側だけが壁に接していた」なら肩甲骨が外転して、肩が前にせり出したままの状態になっています。そうした人が肩甲骨どうしをぐっと引き寄せ、全体を壁につけようとすると、どうなるでしょうか?
猫背で肩甲骨の外転がクセになっていれば、肩甲骨を壁につけようとすると腰が過剰に反ってしまうはずです。丸まった背中を反らすと、腰まで反ってしまうのは、腰と猫背が連動してるせいです。
つまり猫背は肩だけでなく、「腰から上」全体が前かがみになる現象です。これを正すには「背骨の S 字のカーブ」を取り戻すことが必要です。適正な背骨のS字を描ける姿勢なら、肩甲骨が壁に付き、かつ腰も「手の平一枚が入る程度」の距離を保てます。
それには、軽く腹筋に力を入れることが不可欠です。この状態をきついと感じるなら、運動不足も気にした方が良さそうです。
頭の重さを支えきれていますか?
前かがみになればなるほど、首の負担が増大します。座った時でも、腰から上をまっすぐ伸ばしておくことが重要です。人間の頭は軽い人でも4キロ、重い人の場合は10キロにも達します。
特に活躍するのは肩甲挙筋や僧帽筋などを肩甲骨と頭部や頚部の骨とをつなぐ役割を果たす筋肉群です。さて、ここでキーポイントになるのは「首の骨」です。首の骨は前方に軽く前へのカーブを描くことで、頭の重さとのバランスをとっています。
つまり、筋肉をあまり使わなくても、頭の重さを支えることができるのです。しかし、前かがみの姿勢が続くと、頚椎のカーブが崩れて、頭の重心が前に入ってしまいます。そのため首の骨が前弯のしなりを失い、ストレートネック(頚椎がまっすぐになる状態)は、首周りの筋肉に過剰な負担をかける原因となります。
座っている時に「前かがみになってるなぁ~」と気づいたら、そのつど「骨盤の真上に頭がくる」姿勢へと戻しましょう。なお、骨盤の真上に頭がある状態=「傾き0度」の状態で筋肉にかかる負荷が4 kgから6 kgだと考えると、「15度」の時には12 kgの負荷がかかる計算になります。「30度」傾けば18kg、「60度」ならなんと27kgもの負担がかかります。
これは、首や肩に痛みが起こらない方が不思議なくらいです。丸まった姿勢でいると、胸郭(肋骨の前面)が縮まって、呼吸も浅くなります。すると、体内に十分な酸素が送られず、新陳代謝の低下や疲労物質の生成を招くことになります。
さらには、内臓も圧迫するため、消化機能も低下します。目先の「猫背の楽な座り姿勢」を選ぶことで、かえって体に負担をかける結果にならないよう、注意し正しい姿勢が必要です。