免疫は、私たちの体をウイルスや細菌などの外敵から守るために働く重要な防御システムです。
しかし、睡眠が不足したり、偏った食事が続いたり、運動量が落ちたり、ストレスが積み重なったりすると、その力が十分に発揮できなくなることがあります。
そこで今回は、免疫がどのように体を守っているのかという基本的な仕組みと、日常生活の中で意識したい食事・睡眠・運動のポイントを、分かりやすく紹介します。
免疫のおかげで健康に過ごせる

私たちの体は、日常の中で絶えず外からの刺激にさらされています。空気中にはウイルスや細菌、カビなどの異物が存在し、呼吸や食事のたびに体内へ入り込もうとしますし、怪我をしたときの傷口も侵入の入り口になります。
こうした外敵から身を守る仕組みが「免疫」です。
免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があり、様々な ウイルスや細菌などの異物に対応できるように備えています。
発熱は体がウイルスと戦っている証拠
風邪で熱が出ることは、決して悪い反応ではありません。体はウイルスに対抗するために体温を上げ、免疫の働きを強めようとします。発熱や節々の痛み、下痢、鼻水といった症状は、まさに免疫が異物を排除しようとしているサインです。

発熱は免疫細胞の働きを高める
例えば、発熱は体温を高めることで免疫細胞の数や働きを活発にし、異物への攻撃力を引き上げます。
炎症や鼻水は異物を排除するための反応
喉の痛みはウイルスを追い出すために起こる炎症であり、くしゃみや鼻水は鼻粘膜に付着した異物を外へ押し出したり、洗い流したりするための反応です。
免疫力が弱ると風邪を引きやすくなる
こうした免疫細胞の連携によって体はウイルスと戦っていますが、その力が弱ってくると注意が必要です。年に何度も風邪をひいたり、治りが遅かったりする場合は、免疫機能が低下しているサインです。
免疫細胞は役割を分担しながら連携して働く
免疫は、ひとつの細胞が単独で体を守っているわけではありません。白血球の中に存在する多様な免疫細胞が、それぞれの役割を担いながら連携して働いています。
異物を察知する細胞、攻撃する細胞、情報を伝えて仲間を動かす細胞などが協力し合うことで、私たちの体はウイルスや細菌からしっかり守られているのです。
自然免疫は体内に侵入した異物を先に迎え撃つ

自然免疫は、体内に侵入した異物をいち早く察知し、まず最初に対応する免疫の仕組みです。異物を取り込んで処理したり、細胞膜にダメージを与えて無力化したりするなど、即時の防御反応で体を守ります。
体内に異物を見つけると真っ先に迎え撃つのがマクロファージや樹状細胞、NK細胞、マスト細胞、好中球などです。それらは異物を食べたり、殺傷したりして異物から体を守ります。こうした第一防御隊が自然免疫です。
- ●自然免疫の種類
- ・マクロファージ
- ・樹状細胞
- ・好中球
- ・マスト細胞
- ・NK細胞
獲得免疫は異物に合わせた攻撃手段で戦う

自然免疫で対応しきれなかった細菌やウイルスに対して、相手の特徴を細かく見極めながら“その敵に特化した”方法で攻撃する、より精密で高度な免疫システムです。
異物のパワーが強い時はヘルパーT細胞やキラーT 細胞、B細胞など、獲得免疫と言われる 第二次防御隊の出番です。
マクロファージや樹状細胞などが得た情報を元に、異物に合わせた攻撃手段=抗体を作って攻撃していきます。抗体は一度作られると記録され同じ異物には素早く対応できるようになります。
●獲得免疫の種類
・ヘルパーT細胞
・キラーT細胞
・B細胞
免疫細胞は骨髄で作られ、全身で連携して働く
免疫はどこで作られるのか?
「免疫が一箇所で作られる」というより、免疫細胞はすべて白血球として骨髄(こつずい)でつくられます。
骨髄で作られた免疫細胞は全身へ送り出される

私たちの血液の中には、血液を固める血小板、酸素を運ぶ赤血球、そしてウイルスや細菌などの異物から体を守る白血球があります。
免疫を担う細胞の多くは白血球の仲間で、赤血球や血小板と同じように骨髄で作られます。
骨髄で作られた免疫細胞は全身へ送り出され、血管やリンパ管を巡りながら体内に侵入した異物を見つけて対応します。
また、皮膚や肺など外部と接する場所や、異物が入り込みやすい部分にも免疫細胞が配置され、体を守っています。
免疫細胞は脾臓やリンパ節で情報共有し連携して働く
さらに、血液中の免疫細胞は脾臓、リンパ液中の免疫細胞はリンパ節などで情報を共有しながら、必要に応じて抗体を作るなど、それぞれが連携して免疫の働きを支えています。
免疫はどこで働いている?

全身に配置された免疫細胞が常に体を守ってくれていますが、体の各場所でどのように働いているのでしょうか?
目・鼻・喉での免疫の働き
空気や食べ物と一緒に入り込む細菌やウイルスなどの外敵を、粘膜や免疫細胞がキャッチして排除します。
皮膚での免疫の働き
皮膚は外界との境界として、ウイルス・細菌・ほこりなどの侵入を防ぎながら、体内の異常も常にチェックしています。
肺での免疫の働き
肺は外から取り込んだ空気が直接触れるため、ウイルスや細菌、ホコリ、カビなどの異物にさらされやすい臓器です。そのため、異物の侵入を防ぎ、排除するための免疫機能が備わっており、体を守る重要な役割を担っています。
胸腺での免疫の働き
骨髄で作られたT細胞は胸腺に移動し、そこでさまざまな種類へと成熟・分化してから血液中へ送り出されます。
血管での免疫の働き
血管内を循環する免疫細胞が、体内に異物がないか常に監視しています。
肝臓(かんぞう)での免疫の働き
肝臓は血液中のアルコールやニコチン、その他の異物を分解・処理し、体を守る役割を果たします。
膵臓(ひぞう)での免疫の働き
膵臓には免疫細胞が集まり、病原体や異物に関する情報交換を行う場として働いています。
骨髄(こつずい)での免疫の働き
骨髄はすべての免疫細胞の“生産工場”であり、赤血球や血小板もここで作られます。
腸での免疫の働き
体内の免疫細胞の約7割が腸に存在し、食べ物に含まれる有害物質や病原体を排除しています。
食道・胃での免疫の働き
食べ物とともに入ってきたウイルスや細菌を攻撃し、体内に広がらないように処理します。
リンパ節は免疫細胞の情報交換の場
リンパ管は老廃物が流れる通路ですが、リンパ節はそこを通る免疫細胞が情報交換し、免疫反応を発動する“関所”のような役割を担っています。
免疫は毎日がん細胞を排除している

免疫の敵は外からの異物だけではなく、体内で生まれる死んだ細胞やがん細胞も含まれます。
健康な人でも1日に数千個のがん細胞が生じますが、免疫がそれらを見つけて排除することで健康が保たれています。
免疫の機能はがん細胞の分裂と増殖を抑える
がん細胞は、どんな人の体でも毎日のように発生しています。私たちの体は約37兆個もの細胞でできており、通常の細胞は寿命を迎えると死んで、新しい細胞へと入れ替わります。
この仕組みは遺伝子によってコントロールされていますが、遺伝子に傷が重なると、体の指令に従わず勝手に増殖する“がん細胞”が生まれることがあります。
免疫ががん細胞を日々監視し排除している
こうしたがん細胞は、健康な人でも毎日数千個ほど発生しています。
しかし、NK細胞をはじめとする免疫細胞が日々それらを見つけて攻撃し、排除しているため、がんとして発症することなく健康が保たれています。
免疫を高める生活習慣ががん予防につながる
がん細胞が生き残って増え続けないようにするためにも、生活習慣や食事の質を整え、免疫の働きを高めておくことを意識しましょう。
免疫力を活性化するポイントは?
免疫の中でも特に重要な役割を担うのが樹状細胞です。この細胞を正常に働かせるのが免疫力を高めるポイントです。
免疫機能を高める樹状細胞の役割とは?
数ある免疫細胞の中でも、特に中心的な役割を担っているのが樹状細胞です。名前の通り、木の枝のような突起を持ち、血管やリンパ管を巡りながら体のさまざまな場所に常駐しています。
樹状細胞は免疫全体へ指令を出す
樹状細胞は異物を見つけると突起を伸ばして取り込み、その特徴を分析します。そして得た情報をヘルパーT細胞などに伝え、どのように攻撃すべきか指示を出します。いわば獲得免疫の司令塔であり、樹状細胞がうまく働かなければ感染症やがん細胞に対する防御が弱まってしまいます。
自律神経を整えることから
樹状細胞が十分に働くためには、自律神経のバランスを整えることが欠かせません。食事内容や生活リズムを見直し、免疫が働きやすい状態を保ちましょう。
樹状細胞を活性化させる3つの要素とは?

先ほど 樹状細胞を安定させるためには バランスの取れた食事や規則正しい生活リズムが大切 とお伝えしましたが、ここでは免疫機能を活性化させるための3つの要素を紹介します。
①免疫系を十分に働かせるには?
・良質なタンパク質や、ビタミンなどをバランスの取れた食事をとる
・腸内環境を整えるなどによって免疫細胞が活性化する効果があります
②神経系を十分に働かせるには?
・自律神経のバランスを整えることはとても大切です
・ストレスを溜めないようにストレス発散したり、リラックスするのを意識しましょう。
・体を温めたり、十分な睡眠をとるのが効果的です。
③内分泌系を十分に働かせるには?
良質なタンパク質やビタミン、ミネラルのバランスのとれた食事を取る、適度な運動をする、規則正しい生活を送るといいでしょう。
アレルギーは免疫機能の過剰反応
食物など 異物ではないものに対して体が過剰に反応するのは暴走した免疫の影響です。本来は害をもたらすものではないのに、免疫機能が過剰に反応してしまうのがアレルギーです。
なぜ無害なものに免疫が過剰反応するの?
免疫は「自分」と「自分ではないもの」を見分け、体にとって不要なものを排除する仕組みです。しかし、花粉やダニ、小麦や卵など、本来は有害ではない物質に対して免疫が過剰に反応してしまうと、アレルギー症状が現れます。
IgE抗体とマスト細胞がアレルギー反応を引き起こす
アレルギーにはIgEという抗体が深く関わっています。アレルゲンが体内に入ると、粘膜に多く存在するマスト細胞にIgEが結合し、化学物質を放出します。これが刺激となり、くしゃみやかゆみなどのアレルギー症状が起こります。
IgEを作りやすい体質は症状が強く出やすい
IgEを作りやすい体質の人はアレルギー症状が出やすく、重症化するとアナフィラキシーショックという危険な状態に至ることもあります。
起こりやすいアレルギー反応とは?

花粉症
スギ花粉、ヒノキ花粉などによってくしゃみや鼻水などの違和感などの症状が起こります。花粉の飛ぶ季節だけ発症します。
アトピー性皮膚炎
ダニなどにより、ドライスキン、かゆみを伴う湿疹などが現れます。遺伝的関与 もあり、良くなったり悪くなったりもします。
気管支喘息
ダニ、カビ、ハウスダストなどが原因で咳、喘鳴( ゼーゼー・ヒューヒュー音)呼吸困難などを引き起こすことがあります。
食物アレルギー
卵、牛乳、小麦、そば、海老などの甲殻類、ピーナツなどの食品で、蕁麻疹、嘔吐、湿疹 、呼吸困難など様々な症状が起こります。
免疫は年齢とともに免疫機能が衰え弱くなる
体が衰えるのと同様に免疫も年齢とともに老化していきます。しかし、生活習慣の改善によって防ぐことができます。
酸化ストレスと免疫の関係
加齢による酸化反応から、健康な細胞を傷つける酸化ストレスに抵抗する力が低下すると、免疫の働きが衰えるといわれています。
生活習慣で酸化ストレスに負けない体づくりを
そのため、規則正しい生活やバランスの取れた食事などに気をつけて、酸化ストレスに負けない生活を送ることを意識しましょう。
免疫力が低下するとどうなる?

・疲れやすい体質に
・病気が重症化しやすい
・ワクチンを打ってもも病気になる
・風邪が長引く
・インフルエンザに何度もかかる
免疫についての6つのまとめ
①免疫は体を守る防御システム
空気中のウイルスや細菌などの外敵から体を守る仕組み。発熱・鼻水・喉の痛みは、免疫が異物を排除しようと正しく戦っている証拠です。
②「自然免疫」と「獲得免疫」のチームプレー
侵入直後に最前線で戦う「自然免疫(マクロファージ等)」と、敵の特徴を分析して特化した攻撃(抗体)を行う「獲得免疫(T細胞・B細胞等)」が連携して体を守っています。
③免疫細胞は骨髄で作られ、全身で監視
免疫細胞(白血球の仲間)は骨髄で作られた後、血液やリンパ管に乗って全身へ巡ります。特に全体の約7割の免疫細胞が集中する「腸」をはじめ、皮膚・粘膜・リンパ節などが連携の拠点です。
④毎日の「がん細胞」排除と樹状細胞
健康な人でも毎日約数千個発生するがん細胞を、免疫が日々見つけて排除しています。その指令役である「樹状細胞」を正常に働かせることが、がん予防や免疫維持の重要ポイントです。
⑤アレルギーは免疫の暴走(過剰反応)
本来は無害な花粉や食べ物に対し、IgE抗体やマスト細胞が過剰に反応することで、花粉症やアトピー、喘息、食物アレルギーなどの症状を引き起こします。
⑥生活習慣(食事・睡眠・自律神経)で免疫力を維持
加齢や酸化ストレスで免疫機能は低下しますが、良質なタンパク質やビタミンの摂取、腸内環境の改善、ストレス解消や十分な睡眠によって、免疫力の低下を防ぐことができます。
