
第1肋骨で形成されている、胸郭出口において、腕神経叢、鎖骨下動静脈が圧迫されことにより、痛み、しびれ、だるさなどが発表されます。症状が悪化するような負荷を避けるようにして、治療には物理療法の他、斜角筋ロックや星状神経ブロックなどの治療に用いられます。
胸郭出口症候群の「胸郭」っていったい何でしょう?

胸郭は12個の胸椎、12対(計24本)の肋骨、そして胸椎から成り立っています。
12対の肋骨は、12個の胸椎の左右の横突起に接していますが、上の7対だけが上方でで個々に直接胸骨と接し、次の3対の胸骨は一緒になって胸骨と接しています。
最下方の第11肋骨と第12肋骨はどこにもせずに浮いている状態です。胸骨は上方から胸骨柄(きょうこつけい)胸骨体、そして胸骨剣状突起(きょうこつけんじょうとっき)に分けられます。
胸郭出口の筋肉はどんな筋肉があるのでしょうか?

胸郭の筋肉はほとんど全てが呼吸に関与しています。安静時の呼吸は、横隔膜の収縮によってなされています。
横隔膜が収縮して、加工すると胸郭の容量が増加し、外気圧と均等化するために、空気が吸い込まれます。さらに、運動中のように大量の空気が必要の場合は、胸郭にある他の筋肉が呼吸を助けます。
斜角筋は第一肋骨、第二肋骨を挙上し、胸郭の空気の容量を増大させます。また、外肋間筋によって胸郭は更に拡張します。
その他の呼吸筋として、肋骨挙筋と後挙筋が挙げられます。反対に、内肋間筋、胸横筋及び、肋下筋の収縮によって強い呼気が生まれます。

胸郭にある筋肉は?その筋肉の作用とは?
・横隔膜:吸気のために収縮すると、腱中心が下方に下がり胸郭が広がります。
リラックスすると、上方に自動的に上がって息が吐き出されます。
・内肋間筋:呼気では、全ての肋骨を引き上げ息を吐き出します。
吸気では、第1から第4の肋骨の肋軟骨を引き上げます。
・外肋間筋:肋骨を引き上げる作用です。
・助骨挙筋:肋骨を引き上げます。胸椎の側屈の作用です。
・肋下筋:肋骨の腹側部を引き上げて、胸郭の呼吸量をを減らします。
・前斜角筋:第1肋骨を引き上げます。頚椎の側屈と反対側への回旋の作用があります。
・中斜角筋:第1肋骨を引き上げます。頚椎の側屈と反対側への回旋の作用があります。
・後斜角筋:第2肋骨を引き上げます。頚椎の側屈と反対側への回旋作用があります。
・上後鋸筋:第2から第5肋骨を引き上げ、吸気の補助の作用があります。
・下後鋸筋:第9から第12肋骨を引き上げ時の補助の作用があります。
・胸横筋:肋骨を引き下げる作用があります。
胸郭出口の周りで圧迫される腕神経叢とは?

人体の神経で主な神経叢としては、頚神経叢、腕神経叢、腰神経叢、と仙骨神経叢が挙げられます。
腕神経叢はC5とC6の前枝が吻合して上神経叢を形成します。C7の前枝は、そのまま中神経幹を形成し、C8とT1の前枝は吻合して下神経幹を形成します。この3つの神経幹は鎖骨の後方で前枝と後枝に分かれていきます。
上神経幹と中神経幹のそれぞれの前枝は吻合して、外神経束を形成し、下神経幹の前枝はそのまま内側神経束に移行していきます。そして、3つの神経幹の後枝が吻合して後神経束を形成します。(外側神経束はより外側を、内側神経束は、より内側を、後神経束は、より後方を走行していきます)
最終的に、それぞれの神経様は上肢の筋肉を支配する、個別の名前を持つ神経と枝分かれしていきます。
腕神経叢から枝分かれする主要な神経
・腋窩神経は三角筋と小円筋を支配し、肩関節外転には不可欠な神経です。
・筋皮神経は烏口腕筋と上腕二頭筋、上腕筋を支配する為、肘関節の屈曲に大きく影響します。
・橈骨神経は、上腕と前腕の後方の筋肉を支配するため、手関節、手指の伸展に大きく影響します。
・正中神経は、前腕前面のほとんどの筋肉やいくつかの手の筋肉を支配しています。
正中神経は手根管を通過するので、そこで炎症を生じると手根管症候群となります。
・尺骨神経は前腕前内側の筋肉や、多くの手の筋肉を支配します。
各腕神経の神経構成とは?
・腋窩神経はC 5とC 6の前枝からなります。
・筋皮神経はC5からC7の前枝からなります。
・橈骨神経はC5からC8、そして、T1の前枝からなります。
・正中神経はC55からC7の前枝からなります。
・尺骨神経はC8とT1の前枝からなります。
腕神経叢から枝分かれするその他の神経とは
・上肩甲神経は上神経幹から分枝し、棘上筋と棘下筋を支配します。
・鎖骨下神経も上神経幹から枝分かれし、鎖骨下筋を支配します。
・内側胸筋神経は内側神経束から枝分かれし、大胸筋と小胸筋を支配します。
・肩甲下神経は肩甲下筋と大円筋を支配します。
・胸背神経は広背筋を支配します。
胸郭出口症候群って一体何?3つの原因に分けられます
胸郭出口症候群は、大きく3つの原因に分けられます。
1:斜角筋症候群
2:過回転・小胸筋症候群
3:肋鎖症候群
で分けることができます。
胸郭出口症候群の原因、誘因とは?

・鎖骨下から第1肋骨と鎖骨、鎖骨の下の烏口腕筋に付着する小胸筋までの隙間を、「胸郭出口」と言います。
・胸郭出口において、腕神経叢鎖骨下動静脈が圧迫されることにより、発症したものを総称してそういわれます。
・第1肋骨と鎖骨の間の空間に、腕神経叢と鎖骨下動静脈があり、後方は中斜角筋、前方は前斜角筋が走ります。小胸筋はやや遠位にあります。この中に頚肋、小斜角筋、異常な線維性索状物が介在することで症状を生みます。
・肩の挙上や外転の運動で肋鎖間は閉鎖して、肩や鎖骨がまっすぐで生理的前弯があると一層狭くなりやすくなります。
胸郭出口症候群の症状所見は
・20歳代から30歳代の女性に多く、頚椎捻挫や肩周囲の外傷などでも発症することもあります。
・麻痺など視覚的な神経脱落症状は明らかでない場合が多く、血管の圧迫原因による、上肢のしびれ、痛み、コリ、だるさ、チアノーゼの、冷感などの自覚症状が主になります。
・発汗異常、めまい、吐き気、頭痛などもあり、自立神経由来のものと区別しがたいです。
・まれに筋萎縮もおることもあります。
胸郭出口症候群の検査方法、診断、分類方法は?
・腱反射は正常でスパーリングテスト(Spurling Test)とジャクソンテスト(Jackson Test)は陰性となります。

・モーレイテスト(Morley Test)は鎖骨上窩で腕神経叢を指で圧迫すると、痛みや放散痛を誘発します。

・アドソンテスト(Adson Test)は頚椎をやや伸展し、反対側に回旋して息を深く吸って止めるテストです。頸椎の回旋、伸展時に橈骨動脈の脈が弱いと陽性と診断されます。
・ライトテスト(Wright Test)は両腕を真横に開き、前腕が地面に垂直になるように、肘を直角に曲げる肩外転外旋位を取った時に、橈骨動脈の拍動が減弱または、消失すると陽性と診断されます。

・エデンテスト(Eden Test )は両肩を伸展位で下方に引いた時に、橈骨動脈の拍動が減弱、または消失します。

・ルーステスト(Roos Test)はライトテストの姿勢で、3分間拳を握って開く動作をしてもらう運動負荷テストです。 重症例では3分間継続して握って開く動作ができないことがあります。

・単純 X 線で頚椎、肋骨変形、頸助を確認します。ライトテストの姿勢で、鎖骨下動脈造影を行って、圧迫所見を診断します。診断は以上を組み合わせて行い判断します。
・頚椎椎間板ヘルニア、頚髄症、肘部管症候群、脊髄空洞症、脊髄腫瘍、腕神経腫瘍を鑑別する必要があります。
胸郭出口症候群の改善方法、治療方法とは
・整体で前斜角筋、中斜角筋、胸郭出口の神経叢周辺や肋骨周りの筋肉をしっかりほぐし、背骨の矯正などで改善されます。
・症状が悪化するような、上肢の体勢や負荷を避けるように環境を整えます。
・温熱療法などの物理療法のほか、体操療法、薬物療法、斜角筋ブロックや星状神経節ブロックなどを組み合わせて行います。
・手術は日常生活や仕事に支障がある場合には行いますが、牽引による症状には効果がないと考えられています。
・重症例は圧迫要因により、第一肋骨切除切除、斜角筋切除を行います。
このような症状は動揺性肩関節(肩関節がゆるく亜脱臼しやすい状態)でも生じます。