
橈骨神経麻痺の疾患概念としては、橈骨神経が圧迫、あるいは損傷されて生じます。上腕から指にかけての麻痺を伴う状態です。腕枕のように、長時間上腕が圧迫され続けた場合などに起きやすく、肘から指の運動麻痺しびれなどの症状が出ます。肘関節より近位で麻痺が生じる「上位型」と肘関節より遠位で麻痺が生じる「下位型」には分けられます。

橈骨神経麻痺の誘因と原因とは?
橈骨神経の圧迫あるいは損傷によります。圧迫が長時間の腕枕なので起こりやすいです。上腕骨骨幹部骨折、神経炎や血腫などが原因になることもあります。

橈骨神経麻痺の誘因と原因の詳細
●多くは橈骨神経が圧迫されて生じます
●橈骨神経は上腕骨の周りをらせん状に走行しているため、上腕が圧迫されることで、容易に上腕骨に押し付けられる状態になります。
このため、身体の下敷きにした状態、あるいは腕枕など上腕が圧迫された状態で寝た場合に、起きて麻痺に気がつくようなことがしばしば見られます。
●刃物やガラス、上腕骨骨折に伴う骨片による直接損傷、血腫やガングリオンなどによる損傷なども起こりえます。
● 前腕近位部では「フローゼのアーケード」と呼ばれる回外筋入口部で軟部組織に締め付けられ、麻痺を生じます。

上腕骨麻痺の病態とは?
橈骨神経は上腕、前腕の外傷や圧迫使いすぎなどの影響を受けやすいです。
骨、軟骨組織に圧迫されて麻痺を生じた場合は、1カ月から数か月以内に 自然回復することが多いです。
橈骨神経麻痺の症状、臨床所見とは?

上腕から手、指のしびれ、知覚障害、運動麻痺(下垂手・下垂指)
●橈骨神経は親指から中指(環指)の背側・手背橈側、前腕、上腕遠位の背橈側の感覚と、運動では肘関節の伸展、前腕の回外・指関節と手指MP関節の伸展を支配します。
●頭側神経が肘関節レベルように近位で麻痺すると、これらの領域に感覚障害が生じ、かつ、手関節の背屈・手指MP関節の伸展が不能となる下垂手を呈します。
●骨神経は肘関節レベルで深枝と浅枝に分岐します。深枝(後骨間神経)は運動神経であり、深枝のみの麻痺の場合は、下垂指となります。知覚障害は生じません。浅枝は知覚神経であり、浅枝のみの麻痺の場合は、運動麻痺は起こらず、親指付け根付近の知覚障害を呈します。
橈骨神経麻痺の下垂手はどんな状態?

橈骨神経麻痺の下垂手は、手首の背屈と指の中手指関節(MP)関節の伸展ができなくなり、手首から先がだらりと垂れ下がった状態になります。知覚障害を併発しています。
橈骨神経麻痺の下垂指はどんな状態?

橈骨神経麻痺の下垂種は、手首の背屈はできますが、MP関節の伸展ができなくなり、指が垂れ下がった状態になります。知覚障害は起こっていません。
橈骨神経麻痺の検査方法・診断方法・分類は?
●下垂手、下垂指、知覚障害の範囲で障害部位を診断します。
●麻痺の範囲と程度を確認するため、針筋電図検査などを行うことがあります。
●腫瘍による圧迫や神経断裂が疑われる場合はMRI等の画像検査を追加します。

橈骨神経麻痺の治療方法とは?
●神経圧迫や牽引により生じた麻痺の場合は、経過観察あるいは、局部安静などの保存療法で回復を待ちます。
回復しない場合、もしくは麻痺が進行する場合は手術治療を検討します。
外傷性に神経断裂を生じた場合は、早期に縫合処置の手術を行います。
●圧迫麻痺の多くは、1カ月から数か月で自然に回復します。
●必要に応じて装具などでの局所安静、もしくはビタミンB12製剤の服薬などを行います。
●回復しない場合は手術治療を検討します。神経剥離術のほか、不可逆性の神経損傷を呈した場合は、腱移行手術など、機能再建手術を行うことがあります。